ゴルゴちゃん13才、築地に行く。6


 そのおいしいものが、場外市場にもひしめき合っていた。



「はーい、玉子焼きだよぉーー! うまいよぉーーーーい!」



 通りから一歩入れば、そこには商店がマガジンに押し込められた弾丸のごとく、整然と並んでいた。


 その隙間に見えるのは、客が行き交う狭い通りの数々だ。


 喧噪に混じり、店先では呼び込みの声が発せられる。


 中でも、通りに面して何軒もある、玉子焼き屋の威勢が良かった。


 魚市場である築地で、なぜこれだけの玉子焼き屋に需要があるのかは知らないが、店先で職人が次々玉子焼きを仕上げていく。


 分厚く、黄金色に焼き上げられたそれは、できたての芳香で客を引きつけていた。


 ゴルゴちゃんもつい、ふらふらと立ち寄りそうになるが──今はダメだ。


 追跡者二人の存在が鬱陶しく、おいしく食べられそうにない。


 せっかく玉子焼きを串に刺して、食べ歩きできるものが売られているというのに。



「…………」



 とにかくゴルゴちゃんの目的は、二人をまくこと。


 玉子焼きの匂いに後ろ髪を引かれながらも、ゴルゴちゃんはごった返す人の中に入るのだった。


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