ゴルゴちゃん13才、築地に行く。1


 東京、築地──。


 昨今移転問題で揺れている、築地市場のある場所だ。


 日本全国の漁港から魚が集まり、ここを通って東京近郊の店に卸されていく。


 そこにゴルゴちゃんは昼間から、いつもの制服姿でやってきていた。



「…………」



 普通なら平日のこの時間に、中学生がなぜ、と訝られてもおかしくはないが──そうでもない。


 築地は常に、観光客でごった返している。


 そこには多くの外国人に混ざって、学校見学などでやってきた、制服を着た学生たちもちらほら見られた。


 だからゴルゴちゃんも、違和感なく溶け込めるのだ。


 もっとも相変わらず肌身離さず担いでいるガンケースだけが、少し目立ってしまうのだけれど。


 しかし、これはあえての「目印」だった。



「チョット、イイデスカア?」



 築地場内の入り口付近で、ゴルゴちゃんは外国人男性に声をかけられた。


 アロハシャツにジャケットを合わせた、禿げ頭の陽気そうな老人だ。


 その手には英語で書かれた旅行雑誌を持っていて、いくつも付箋が貼られていた。


 たまたま道を尋ねに着た、不慣れな旅行者といった出で立ちだが、そうではない。


 サングラスと髭で変装しているものの、ゴルゴちゃんの見知った相手だ。


 今日、ここで接触する約束となっていたCAIの元長官、その人である。


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