ゴルゴちゃん13才、サークルKに行く。13


 カップの中身を飲み干す頃には、マスターはゴルゴちゃんの前にあった紙袋や、コンビニ袋を片付けていた。


 やはり完璧な気配りだ。


 この界隈で、こんなバーを何十年も続けているだけのことはある。


 だからゴルゴちゃんも野暮はしない。



「…………」



 空のカップをカウンターに置くと、もう椅子から降りていた。長居はしない。


 横に置いていたガンケースを手に取って、コートのポケットから現金を取り出した。


 もちろんさっきのお茶代だ。


 だがカウンターの上にぽんと投げたのは、無造作にまとめてあった、何枚かの一万円札だった。


 もちろん釣りは必要ない。


 マスターも受け取りを拒まない。


 それが一流どうしのやり取りというものだ。



「また、いつでも気軽に立ち寄ってくれ」



「…………」



 ゴルゴちゃんは返事をしない。


 約束はできない世界に生きているからだ。




 ゴルゴちゃんはバーを出て、冷たい夜の街に帰っていく。


 それでも今は体の中から、ぽかぽかと温まっていた──。


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