百二十九話 真一の提案
【ステータス】
名前:田中真一
年齢:17歳(56歳)
種族:ホームレス(帝種)
<二級天使・原初人・ヒューマン(英雄種)・エンペラードラゴニュート・ヴァンパイア>
職業:冒険者
魔法属性:無
習得魔法:復元空間、隔離空間
習得スキル:解析、天地経絡穴、達人(特級)、盗術(上級)、偽装(中級)、隠密+(初級)、万能糸(上級)、完全分裂、危険予測(特級)、気配察知(特級)、索敵+(中級)、神経強化(上級)、鋼鉄の胃袋(中級)、限界突破(特級)、覚醒(中級)、無効キャンセル、衝撃無効(中級)、砂上歩行(特級)、万能適応、超高速飛行(中級)、斬撃無効(初級)、自己再生(特級)、植物操作改(上級)、金属操作(中級)、分離(特級)、圧伏(中級)、独裁力(上級)、高潔なる精神、帝竜息(初級)、麻石眼改(初級)、爆炎剣舞(中級)、竜斬閃(初級)、眷属化、眷属強化改(初級)、眷属召喚、超人化改、竜化、スキル拾い、種族拾い、英雄の器、王の器、帝の器、あくなき進化ヘの道
ザジの死体から種族と偽装、無効キャンセル、万能適応、超高速飛行スキルを取得、ステータスはまた一つ成長を遂げた。
危険予測は特級へ。索敵+は初級から中級へとランクアップ。
すでにあった水中適応は万能適応に吸収される形となった。
「天使って神様の
「それに田中殿への攻撃もだ。少なくとも友好的な相手ではなかったことは間違いない」
「魔物のフリをしていたことも引っかかるね」
「お兄ちゃんと対等以上に戦ってた。由々しき事態」
四人の仲間は天使の死体を囲んで話し合いをしている。
そして、その近くではあぐらを掻いて見下ろす聖獣ジルバがいた。
「そこの男が正体を見破らなければ、オレは魔物に殺されていたことになっていたはずだ。恐らくはそれが狙いだったのだろう」
ジルバは木陰で休む儂に視線を向けながらそう言った。
状況から推察すればそうなるだろうな。
ザジは聖獣殺しの罪を魔物に着せたかったのだ。
その為に姿や口調を変えてまで芝居に徹していた。
儂もステータスを見るまで魔物だと疑いもしなかった。
「でも、一度はジルバさんを追い詰めていた天使が、姿を隠したのは何故なんだろう。僕達が駆けつけた時にはいなかったよね?」
「簡単な話だ。奴もオレと同じように深手を負ったからだ。何事もなかったように現れた時は目を疑ったが、再生能力が非常に高い種族だと考えれば納得もゆく」
「お父さんと並ぶ身体能力に高い再生能力か。もし他にも天使がいるとすれば、敵対するのはあまり賢い選択じゃない気がするね」
「確かにその通りかもしれないな。だが、向こうがその気なら我らは戦うしかない。これは聖獣に対する宣戦布告のようなもの。貴様も端くれなら覚悟するべきだな」
「そうだね……僕だって聖獣なんだ。他人事では済まされない」
ジルバとペロは天使について話をしていた。
聖獣に対しての宣戦布告……もしそうだとすれば国々を巻き込んだ天使との戦争になるかもしれない。どの国も聖獣は崇拝の対象だ。黙って殺されるのを待つなどあり得ない。
「やっぱり天使が一人だけってことはないわよね」
「私もそう考えている。他にも聖獣を狙っている者が必ずいるはずだ」
「じゃあ各国へ一刻も早く警告をした方が良いんじゃない。これってすごく重大な情報よ」
「提案には賛成だ。ただ、先にダルタン王へ報告をするべきだと私は思う」
エルナとフレアの話を耳にしつつ、儂は水筒の水を口にしていた。
隣ではリズが座り込んで、こっくりこっくりと船を濃き始めている。
そこへ馬に乗った騎士達が列を成してこの場に現れた。
先頭を走るのはダルタン王である。
彼は到着とすぐに馬から飛び降りてジルバに駆け寄った。
「ジルバ! 無事だったか!」
「おお、ダルタンの王よ。この者達のおかげでオレは命を拾うことが出来た。なにか彼らが喜ぶような物で謝礼をしてもらえないか」
「んなこたぁ気にしなくて良い! 後できっちり礼をしておくからよ! それよりもてめぇの心配だ! 誰にやられた!? おとしまえつけさせてやる!」
ドドルは頭の血管が切れそうなほど憤慨していた。
聖獣がどれほど大切にされているのか分かる光景だ。
儂は立ち上がって彼らに近づく。
「ジルバは疲れている。できれば今は休ませてやって欲しい」
声にドドルが振り返る。
その目は儂を見た途端に大きく開かれた。
「なんでここにいるんだよ。確か俺の方が先に出たよな」
「飛んできたのだ。同行して貰えばもっと早く到着できたのだが、それを説明する前に出発してしまったからな。悪く思うな」
「……まぁ、ジルバを助けてくれたみてぇだし。そこんところはどうでもいいんだが。で、襲った奴のことはてめぇが教えてくれんのか?」
「うむ、そのことなのだが……こっちに来て欲しい」
儂は話の前に天使の死体を彼に見せることにした。
黒焦げた人らしきものを目にしたドドルは怪訝な表情となる。
「なんだこれ? これが敵だってのか?」
「一見すると翼人に似ていると思う。だが、よく見て欲しい。違いが分かるはずだ」
「髪と翼が白いみてぇだな。それに肌も焼けてねぇ。翼人は砂漠に住んでるから、基本的に浅黒い肌をしているはずだ。ってことはあいつらとは別物ってことか」
「これは天使だ」
「馬鹿にしてんのか? 天使っていやぁ神様の使いだぞ。そんな夢物語みたいな存在がいるわけねぇし。そもそもジルバを攻撃する意味が分からねぇ」
もっともな意見だが、これは否定のしようがない事実だ。
儂は彼に起きた出来事と知ったことをありのままに伝えることにした。
「――六聖獣を抹殺だと?」
「奴のステータスを見た時に知ったことだ。今回の件は用意周到に練られた計画だったことは間違いないだろう」
「だったら敵は天使ってことだな。いいじゃねぇか。売られた喧嘩はどんな相手だろうと買ってやるぜ。こちとら冗談で国王なんてしてねぇんだよ」
「感情的になってしまうのは分かるが今は冷静になれ。相手は天使だけと決まったわけではないのだぞ。背後にいるだろう主神ゴーマなる存在を無視するわけにはいかない」
「悪ぃ。ちょっと頭に血が上りすぎちまってた。けどよ、そのゴーマってのが分からねぇんだよなぁ。本当に神様なのか?」
ドドルは頭をポリポリと掻いて眉間に皺を寄せた。
地球と同様にこの世界でも神の在不在は疑問視されてきた。
それが間接的ではあるものの存在すると知らされたのだ。
誰だって疑いたくなるのは当然である。
「さぁな。少なくとも神と呼称する何かと事を構えるのは事実だ。今はそれくらいしか言えない」
「本物か偽物かすら確かめようがねぇってことか……ま、ぶちのめして吐かせてやりゃあその辺りははっきりすんだろ。やることは変わんねぇからな」
ドドルはニヤリと笑みを浮かべる。
なるほどな。なぜドワーフが獣人と仲が良いのか分かった気がする。
彼らも負けず劣らず好戦的な種族なのだと言うことだ。
むしろ六種族の中で最も怒らせると怖い存在かもしれないな。
「とりあえずここは配下に任せる。城に戻って対策を練るぞ」
「うむ、その方が良いだろう」
儂らはこれからの話をする為に、ペルンの王城へと戻ることとなった。
◇
ここはダルタンの王城の一室。
ダルタン国王とホームレスの他に宰相、将軍、数人の高官が席について話し合いが行われていた。
「天使がなんだろうと売られた喧嘩を買ってやろうじゃねぇか! そうだろ野郎ども!」
「おう! ウチの聖獣に手を出したらどうなるか思い知らせてやる!」
「我々も陛下の意見に賛成だ! 不届きな奴らに制裁を! ダルタン万歳!!」
国王の言葉に誰もが賛成の意を示す。
わかりきっていたことだが、やはり開戦一択だったようだ。
ヤクザの抗争のような雰囲気がなんとも言えない。
それはそうと問題は行う戦略。
敵地も戦力も不明な状態ではとれる手段も限られている。
そこでドドルが背筋も凍りつくような一つの提案を出した。
「怪しそうな場所を片っ端から消し炭にしてやる! ご先祖様の遺産から高威力爆弾の知識を引っ張り出してすぐに作成にとりかかれ! この世界を焦土に変えてでも天使の息の根を止めてやるぞ!」
「ちょ、ちょっと待て! 無茶苦茶だ! 頼むから落ち着け!」
「だったら他に良い案でもあんのか? おん?」
即座に止められたことで王は怒気を放つ。
一時は冷静になったようにも見えたが、実はその怒りは静まるどころかさらに燃えさかっていたようだ。世界を滅ぼしかねない勢いである。
「他国と連携をすべきだ。その上で要柱の六聖獣を一カ所に集めるべきだと進言する」
「一カ所に? そりゃあどうしてだ?」
「敵の狙いは聖獣の抹殺。つまりいずれどこかの聖獣の元へ現れると言うことだ。わざわざ探しに行かなくとも奴らの方から来て貰えば良い」
「なるほどな。その為には協力態勢が不可欠ってことか。けどよぉ、その作戦には大きな欠点があるぜ。どの国の聖獣もデカすぎて簡単に移動できねぇってことだ」
儂はテーブルに近づきドドルの酒瓶を目の前で消して見せた。
突然の出来事にドワーフ達はざわつく。
「見ての通り儂にはこの腕輪がある。これは無機物や有機物にかかわらず、いかなる大きさのものも収納し時間を止める。試したことはないが聖獣も入れることができると思われる」
「マジかよ……なんだその道具」
「すぐに決断は出来なくとも儂は、今回の件と提案を他国にもするつもりだ。もちろん聖獣が居ない国にもな」
「…………」
ドドルを始め将軍や高官達は沈黙した。
自分で言うのもなんだがこの作戦は最善だと思っている。
戦ったからこそ分かるが天使は想像するよりも強い。
あのザジですら二級なのだ。
もし一級の天使が存在するのなら、その強さは恐らく儂を越えているだろう。
だからこそバラバラで戦うのは危険だと判断した。
ここは連合軍の時のように協力するべきなのだ。
「一回も二回も同じか……その話に乗るぜ」
「サナルジアやローガスと手を組んでも良いと?」
「今さら変な意地を張っても意味ねぇだろ。それに考えてみりゃあ他の聖獣が居ることでジルバの安全も確保できんじゃねぇのかって思ってな。多分だが、聖獣を護りながら戦えるような余力はねぇはずだ」
儂は表情を緩ませる。
これでひとまず新しい連合軍結成への目途がたった。
後は各国に連絡しドドルに任せれば大丈夫だろう。
今回は王国に直接関わりのない話でもある。
協力程度に留めるのが一番無難な立ち位置だと考えていた。
「そんじゃあ今回も総指揮を頼んだぜ」
「は? 儂がまとめるのか?」
「当たり前だろ。言い出しっぺがどこに行こうってんだ。だいたい戦ったのも情報を持ってんのもてめぇじゃねぇか。責任から逃れようなんてさせねぇぜ」
ぬぁぁああっ! また儂がやらないとダメなのか!?
気持ちなど知らないとばかりに、ドドルは適当に締めくくって会議を終わらせた。
「またよろしく頼むぜ。田中殿」
グリル将軍が肩を叩いて笑みを浮かべる。
儂はなんとか声を絞り出して返事をした。
すると席に座ったままのドドルが声をかけてくる。
「ジルバの謝礼の件なんだが……地下への立ち入りを許可してやっても良いぜ」
「嬉しい話ではあるが本当に構わないのか?」
「金なんか払うより希望を叶えてやるのが一番だと思ってよ。遠慮なく使ってくれ」
「……使う??」
「あん? まさか地下に何があるのかも知らないでここまで来たのか?」
ロッドマンに視線を向ければ、肩をすくめて首を横に振っていた。
知っていれば事前に詳しく説明をしていたはずだ。
儂らの様子を見たドドルは、小さく溜息を吐いて立ち上がる。
「そんじゃあ俺が色々と説明してやるよ。付いてこい」
ドドルに案内されるまま、儂らはドワーフの英知が眠るとされる地下へと足を踏み入れたのだった。
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