第71話 Blog

 彼女は、あまりブログを更新しない。

 店のスタッフに言われて、渋々更新している。

 風俗サイトでも、オキニの管理などマメな嬢は頻繁に更新して、オキニの客とのやりとりを欠かさない。

 休みの日でも更新している。

 生活の一部になっているのだろう。


 彼女は、オキニの管理もしない。

 たまに、彼女あてにコメントが入るが返事を返さないどころか消す始末。

 頑なに拒否する。

 店で呼んでいた頃は、たまに彼女のブログを見ていたが常々、疑問に思っていたことがあった。

 写真や動画は誰が撮っているのか?

 スタッフが撮る場合が多いと思うが、その場合、事務所と思しき場所で撮影されている。

 彼女の場合は、自室と思われる写真、屋外の写真もある。

 まぁ、彼氏か店外デートのときに撮影した写真をアップしているのだろうと思っていた。

 これも、当時、彼氏がいるのだろうと思っていた理由のひとつでもある。


 彼女を店まで送ることが当たり前になっていた、ある日、僕が聞いてのか、あるいは彼女から話し出したのかは覚えてないのだが…。

「あの写真?ネットで拾った写真だよ」

 少し…いや大分、驚いた…。

「そうなの」と言いつつ、半信半疑だったのだが、自宅に帰って検索してみた。

「美脚画像」「スレンダー」とか彼女の容姿から想像されるワードで検索すると…。

 同じ画像がある。

 驚いた…そして安心もした。


 スタッフが撮っていたのではないということに安心した。

 スタッフが嬢に手を出すということは少ないと思うが、恋愛感情は発生しやすい環境だと思っている。

 風俗だけで収入を得ているのならば、異性と知り合うのは客かスタッフしか無いのだから。

 客と嬢、あるいはスタッフと嬢で付き合った、あるいは結婚したという話は、嬢から聞いたことがある。

 絶対に嫌だという嬢は、大抵、昼職をもっている。

 そんな環境だけに、僕は未だに彼女が心配なのだ。


 彼女を大切にしてくれるならいい。

 彼女に好意を持って、彼女がそれに応えるのならば…僕はそれでもいい。

 半分は本心、もう半分は…。


 本当は、僕が彼女を幸せにしてあげたい。


 なぜ…僕は、これほど彼女に固執するのだろう。

 それは、よく解らない…。

 彼女は、自分は他人に嫌われると言う。

 でも、僕は彼女が嫌われる様な女性に思えない。

 嫌われる部分もあるだろう…それは解る。

 それは、「猫」好きか、「犬」好きかの差でしかないように思う。


 その程度のこと…。


 僕は「彼女」が好きで…「他人」が嫌い…それだけのこと…。


 好きな人を幸せにしたい と 好きな人に幸せになってほしい 似ているようでまるで違う。


 前者は「自惚れ」後者は「卑下」 僕は、どちらにでも傾く…。


 Blogの写真のように…修整されながら…本心は上書きされて別のナニカに変わっていく…

 僕の心は…今…何になっているのだろう…。

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