第61話 彼女の友人
どのくらいの付き合いなのか解らないが、彼女の話によく出てくる友人がいる。
彼女は「メンヘラ」と呼んでいる女性。
彼女は、「メンヘラ」に振り回されていると、よくボヤく。
毎週のように会っては食事に行っているらしいが、彼女曰く、自分勝手で迷惑なんだそうだ。
彼女は、文句を言いながらも彼女の都合に合わせて予定を決めている。
僕は少し、メンヘラが羨ましく思う。
僕のためには、時間など作ってはくれないが、メンヘラのためには時間を空けることができる、そんな彼女に、僕は少し苛立ちを覚えることがある。
もしかしたら、恋人かもしれないわけだし…。
正直な気持ちを言えば、僕と彼女の間に明確な関係性はなく、仮にメンヘラでないにしても、恋人がいても何も言えないのだ。
こういうことを考えて、悩む僕を彼女は病んでるという。
「キミのパジャマを借りたよ…だってさ…」
唐突に彼女が、そんなことを言った。
僕は、恋人かと思い言葉を失った…。
「妹…アタシのウサギのパジャマ着てたみたい」
あぁ妹か…と安心した。
彼女は妹を可愛がっているようだ、度々、会話にでてきたことがある。
僕から見て彼女が『姉』というイメージが湧かない。
歳の差があるから…。
実家にあまり帰りたがらないが、聞いていると、家族仲が悪いとは思わない。
ただ、僕と同じ…自分の居場所がよく解らないのだと思う。
きっと似ているのだ。
僕に友人と呼べる人間は少ない。
彼女の友人って、どんな人だろう…。
彼女の事を、どれだけ知っているのだろう…。
彼女の仕事を知っているのだろうか…。
「私の事を聞かないんだね…」
彼女が僕に言った言葉、その裏は…興味無いの?かもしれない…。
彼女に好意を寄せられる男とは、どんな男なのだろう。
彼女は、僕と、いるところをメンヘラに見られたら刺されるという。
きっと刺されるのは僕。
嫌だ、面倒くさい、と言いつつも一番、彼女の近くにいるのは、そのメンヘラだろう。
聞いていると関係性も普通ではない。
ETCカードを借りた。
彼女が寝てたから、彼女の財布でコンビニで沢山買い物をした、あそこで夕食一緒に食べた、割と高い店だ。
彼女の話だと、親が金持ちらしいのだが…なんだか聞いていると裕福な恋人のような関係に聞こえる。
本当に女性なのだろうか…と半信半疑になる。
アパートの契約も彼女の名前で借りたらしい。
友達の域を遥かに超えている。
縁を切ると言っているが…それはそれで、心配だ。
彼女のプライベートなど、僕は何も知らない…。
聞いたら…たぶん…僕にはツライことばかりなのかもしれない。
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