第48話 途切れ…途切れ…

 メールは途切れ…途切れ…。

 彼女が客のところに居る時は、当然返ってこない。


 気にしてもしょうがないのだが…気分よくというわけにはいかない。

 それは割り切って考えなければならない。

 しかし、割り切ろうとすると、どうしても心が割れてしまう。

 好きだという気持ち…所詮は便利屋という気持ち…これがキレイに分離する。


 映画やドラマの主人公であれば、困難に負けないのだろう…そして綺麗に結ばれる。

 現実は、そんなに簡単ではない。

 1時間で解決するようなことはないのだ。


 愛しているからこそ悩む、それは事実。

 愛が無ければ…悩まないのに…。

 きっと、僕が悩むと、彼女も悩むのだ。

 だから、僕は彼女の前で平気な顔をする。

「頑張ってね」・「お疲れ様」

 だけど…。


 彼女は変わっている。

 僕は、彼女のような女性は初めてだ。


 わがまま、といえばそれまで…純粋とは言わない、ただ、自分に正直だとは思う。

 時折、他人と衝突する。

 他人の食べ物を勝手に食べる、捨てる。

 そして嫌われる。

 僕にしてみれば、プリン1個食われたくらいで、彼女にイラつきはしない。

 それは、彼女を好意的に見ているから、だが、そうでない人が、そういうことをされると、好意的には見られない。

 他人の持ち物を勝手に捨てたりもするらしい。

 当然、怒られるのだが、それをメールで報告してくる。

 彼女なりの理由がある、というか、そういう癖があると思わないと付き合えない。

 病的な部分が、時折、垣間見えるのだ。

 それが他人を遠ざけるのだろう。

 わがまま・幼い、などと言われ、書かれるのは、きっと彼女のそういう部分を見ている人達。


 僕は、それを可愛く見ている。

 そう…猫の行動を見ているように。


 彼女は行動も、言動も、矛盾だらけだ。

 けど、その瞬間は、彼女なりのナニカに従って動いている。

「だって賞味期限切れそうだったから…アタシ食べれないし…だから捨てたら、怒られた…」

 他人の物なんて触るものじゃないよ。

 そう言っても、気になるとどうしようもないようだ。

「ずっと事務所にアイスがあったから、食べたら、怒られて嫌われた…」

 買って、ゴメンって謝れば。

 怒るほど高いアイスかと思えば、100円のアイスだそうだ。

 怒るスタッフも大人げないとは思うが、まぁ勝手に食べたのは彼女だ。


 やはり、一般社会に馴染めないのだとは思う。

 きっと医者に診断させれば、なんらかの精神障害なのだろう。

 食生活も、奇異と思われる行動も、倫理観・羞恥心などが少し欠落している。


 僕は、そんな彼女を愛おしいと思う…。

 たとえ、他人にバカと言われても…。

 それでも、彼女を嫌いになれないから…。




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