第47話 イラつく

「オマエ、まだ水商売の女に使われてんのか?」

 先輩から電話がきた。

 新年会の誘いから、そんな話に逸れた。


 いいかげんにしろ!

 と怒鳴られた…。

 一応、彼らには風俗嬢とは言ってない。

 水商売と言ってある。

 先輩曰く…

 誕生日にも、クリスマスにも、初詣にも一緒に付き合ってくれないんだから、彼女は僕に気などないということだ。

 お前が、どれだけの時間と金を使っても、一緒にいることすらしない女に、どうして好意を感じるんだ。

 クリスマスだって、他に男がいるからだろう、便利なんだよ、ただの便利屋だ。

 捲し立てるように怒鳴られた…。


 一般的にはそうだろう。

 どれか1日くらい、僕のためと考えるのが普通であり、その全てを無視できるなんて、嫌われてると判断しろ、と言われた。


 その通りなのだろう。


 先輩にしてみれば、僕がタクシー代わりに使われ、メール1本で宅配までする、そんな扱いを受けていることが許せないようだ。


 彼女に対してというよりは、僕にイラついているのだ。

 で、いいかげんにしろ!と言われたのだ。


 確かに、彼女は僕の恋人ではない。

 僕が想いを寄せているだけ。


 客観的に見ても、先輩の意見は正しい。

 僕だって、他人ごとであれば同じように思うはずだ。

 いいように利用されて…バカだと思う。


 解っている…僕はバカだ。

 誰よりも解っている、僕自身が…。


 いつから、そんな腑抜けになったんだ。

 ちゃんとした女と付き合え。


 今のお前を見ているとイライラするんだよ!

 いいな、付き合ってるわけでもないんだ、もう逢うな!

 そう言って電話は切れた。


 腑抜け…か…言いたいことを言ってくれる…。

 逢うな…で気持ちが途切れるなら…とっくにそうしている。


 彼女は、僕とSEXしたいわけじゃない。

 だから…できるだけ僕も抱きたいという気持ちを抑える。

 彼女は、僕と一緒にいたいだけなんだと思う。

 ただ…それだけ、だからイベントに拘らない。

 他に送迎してくれる人がいれば、僕でなくてもいい。

 他に居ないから、僕を呼ぶだけ。

 もう少し、よく見ても、一番最初に呼んでみるだけ…そう思うことにしている。

 これ以上を望まないように…。


 子供の頃から、何も変わらない…全ては、自分より上にある。

 だから視線は、自然と上を睨むようになる。

 上目使いの人生…いまだにそうだ。


 羨ましくて…欲しくて…妬ましくて…ただただ睨む。


 腑抜けたわけじゃない…己をわきまえているだけ…。

 手を伸ばさぬよう、自分を律しているだけ…。


 僕だって…彼女と過ごしたかった…そう言えない…出来ない…。

 ただ…送迎するだけが精一杯。


 それだけでもいい…傍にいれるなら。

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