第65話 突然の招待

「大丈夫かい?具合が悪いのか?」


彰さんが本宮君に聞く。


「いえ、もう大丈夫です。ご心配おかけしました」


いつも通りの声で本宮君が答えた。


私と本宮君がベンチから立ち上がった、その時。庭園の向こうから一人の人物が歩いて来るのが見えた。


「母さん」


彰さんが言う。


それは、美奈子さんのカフェで会った彰さんの母親だった。今日は、肩の大きく出た黒のドレス風のワンピースを着ている。


「もうウエディングドレスは決まったの?」


「ああ、決まったよ」


「そう、良かったわね」


彼女は小さく微笑んだ。


「ねぇ、彰。今から美奈子さんをうちに招待しようと思うんだけど」


「えっ……?」


彰さんが少し驚いた表情をする。


「どうしたの、珍しいね」


「そんなことないわ。貴方達がいつも二人で出掛けてしまうからでしょ」


「分かったよ。今、美奈子は着替えているところだから。着替え終わったら言うよ」


そう言った後、続けて彰さんが言った。


「恵ちゃんもいいかな?」


「ええ、構わないわよ」


その会話を聞いていて、私は言う。


「じゃあ、私と本宮君は、これで……」


さすがに彰さんの家にはと思っていると、彼が言った。


「彼女達……桜井さんや本宮君もどうかな?」


彰さんの言葉に母親が尋ねる。


「そちらの二人は、どなたなの?美奈子さんのお店にも確かいたわよね?」


「恵ちゃんの友達だよ」


「そうなの。なら構わないわ」


彰さんのお母さんが答えた。


そんな訳で、私と本宮君も、白石邸へとお邪魔することになった。


美奈子さんは彰さんの車に、恵さんは私達の車に乗って、彰さんのお母さんの運転する車の後に続いて移動する。


車を走らせること10分程。周りの住宅と比べて、一際大きな白い邸宅が目の前に見えてきた。


私達の前を走る彰さんの車が、その敷地へと進み、広々としたガレージに入ると止まった。ガレージには、外車や国産高級車ばかり。


「恵さん。この白石家って、すごいですね!」


私の言葉に、後部座席から恵さんが答える。


「ええ。彰さんのお父さんは、何店舗ものレストラン経営をしてるんです。多忙で、ほとんど家にいないって彰さんが言ってました」


「へぇ~」


感嘆した後、本宮君と一緒に車を降りた。


「どうぞ、こちらに」


そして、彰さんの母親の案内の元、白石邸の中にお邪魔する。

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