第18話 明石海峡大橋
Bデッキを抜けてAデッキまで上がると、ドアを開けて外に出る。外はすっかり夜の闇に包まれて、海の向こうに見える街にはたくさんのイルミネーションが輝いていた。
心なしか、風がさっきよりも強く感じる。
「見てください、あれが明石海峡大橋です」
芹沢さんの伸ばした手の先には、大きなブリッジが本土と島を結んでいる。一面夜の闇の中、大橋はエメラルドグリーンのイルミネーションに輝いていた。
「すご~い!綺麗~!!」
またも調査であることを忘れて、ただの一般観光客になる私。
「今見える明石海峡大橋の夜景が、このクルーズで最も美しいとされるビューポイントです」
うん。それは頷ける!
隣にいる、いつもは割と冷静な本宮君さえ、今は、この広大な夜景に心奪われているように見えた。
「そして、ここが、このクルーズの折り返し地点でもあります」
芹沢さんが、そう言って数分後。クイーンメリー号は、大きく旋回すると向きを変える。
そして、客船は元来た航路を戻り始めた。
「ここからまた約一時間の旅の後、このクルーズは終わりです」
クイーンメリー号は、明石海峡大橋から再びゆっくりと離れていく。
「ではまた、オレ戻りますね」
芹沢さんはそう言うと、再び船内に入って行った。
「ほんとに綺麗だったね、大橋のイルミネーション!」
次第に遠ざかっていく明石海峡大橋を見つめながら、隣の本宮君に言う。
「そうね。今夜見ておいて良かったかも」
そして、デッキの一番端に手を置きながら、本宮君が言った。
「予告当日は、こんな風にゆっくりと夜景を楽しんでいられないだろうから」
本宮君……。やっぱり、あの爆破予告の日、乗船するつもりなんだ。
そう思うと、形のない不安が心を過って、綺麗な夜景がどこか遠く思えるのだった。
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