第5話
本屋の前まで来て俺は唸ってしまった。
ポップって、メチャクチャいっぱいあるじゃないか!
ポケットからカードを出して確認する。
『 狸と狐、長いのは参るっしょ
かたくよむたどうのた ぽったぷのうたら 』
ああ、なるほど。
俺は参考書コーナーに足を運んだ。ついでに一冊買って帰ろう。
さて、種明かしすると。
狸と狐は、racoon dogとfoxでスペルが長いのは狸。
狸は、たぬきだから。
『かたくよむたどうのた ぽったぷのうたら』からたを抜くと。
『かくよむどうの ぽっぷのうら』つまり『カクヨム堂のポップの裏』
で、”参るっしょ”から”参考書”。
参考書コーナーにあったポップは三つだけ。ペロンペロンとめくってみる。
はい、発見。5枚目のカード。
『 ケタゲ、―カッ、キラト、ヤモセ、デノヨ
並べて変換してみてね 』
んん? 今度のはちょっとミッションが違うぞ?
まぁいいや。行けばわかるか。とりあえず参考書を買ってこよう。
英語の苦手な俺は長文読解の問題集を選び、レジに向った。
レジはいつになく列ができている。不思議に思って見てみると、なるほど、クリスマスプレゼント用にラッピングしてもらっている人が多い。
……前もって買ってないのか。イブに買い物ってギリギリすぎるだろう。
店員たちはパタパタと忙しなく動き回っている。ギリギリのプレゼントというのに、「○○の絵本はありますか?」とか「おすすめの絵本はどれですか?」とか聞いている人がいる。
本屋でこんなに忙しいなら百貨店はもっと忙しいだろうなぁ。
香織が働いているのは百貨店の子供服売り場。とてもじゃないけどこんな日に休みなんて取れそうもないな。ましてやたかが弟をからかう為になんて。うん、香織は消去だ。
残るは、里奈と沙織と克己。
……やっぱり里奈なのかなぁ。と希望的観測をしてみる。里奈だったら最後に待ってるのは――デートだったりするのかな。
いやいやいやいや。まさかな。可能性は低いけど、沙織か克己がまだ完全に消去できていない。まだ喜ぶのは早い。
なんて考えているうちにレジは俺の順番になった。
「プレゼントですか? ご自宅用で…………」
目の前の店員さんが言いかけている後ろからひょいっと俺の参考書を取った人物がいる。
「お預かりしま~す」
そう言って奥に持っていきラッピングしはじめた。なんか見たことあるような顔の女の子。誰だったっけ?
「あの、別にラッピングしなくていいんですけど……」
「少々お待ちください」
彼女を見つめたまま小声で言うと、手元の本を持っていかれたレジのお兄さんはにこやかな笑みを残して奥へ行き、彼女に話しかけた。が、すぐに戻ってこない。何やら話をしている。
「もうラッピングできるそうですので、あちらでお受け取りください」
しばらくして戻ってきたお兄さんは、さっきと同じようににこやかな笑顔で言うと右手でカウンターの端の方をしめした。
「えっと、会計は……」
「あちらでお受け取り下さい。次の方どうぞ」
俺の質問には答えず次の接客を始めてしまう。俺の後ろに並んでいた客は、俺と店員を見比べながらも本を出した。
……仕方がないので言われた通りにする。
「お待たせしました」
カウンターの端まで行くと、さっきの女の子とは別の店員がラッピングされた本を手渡してくれる。……質問しようと思ったけれど、俺が受け取るとすぐに他の人の接客にうつっている。
忙しそうなので、腑に落ちないまま俺は店を後にした。
……これもこの一連のカードと関係あるのか?
う~ん、次の行き先はわかったけど、謎がまた増えたぞ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます