第2話
公園の並木道は夜には色鮮やかなイルミネーションで彩られるが、今は枯れ枝にライトがコードで繋がっているだけで寒々しい。それでもカップルにはそんなのは関係ないようで、腕を組んだり手を繋いだり……羨ましい限りだ。そんなカップルだらけの並木を突っ切り時計台に着いて辺りを見回す。
けれど彼女の姿はどこにもなくて拍子抜けする。会えると思ったのは勘違いなのか? 間違ってるか?
ポケットからカードを出してもう一度見る。
『 XISEHUOTIEKOT
逆立ちして1引いてね 』
逆立ちして、だから逆から読んで、TOKEITOUHESIX、つまり時計塔へ6。1引いたら5、でGOだと思ったんだけど。5はもしかしたら5時をさしたんだろうか。そういえば急いで飛び出したけど時間指定はない。
ははっ。俺、意気込み過ぎか? いや、それ以前にこれをポストに入れたのは里奈なのか? 一人で過ごすイブをほんとはちょっぴり寂しいと思っていた俺の願望から、彼女を思い浮かべたけれど。
腕組みして考えを巡らす。
母さんが書いたこのカードを受け取ることができた人物。――里奈だけとは限らないよな。
もう一人の幼馴染み、克己。高校が違ったし里奈より会う頻度は低いけど、中学校の頃はべったり一緒だった。あの頃、入院中の母さんの所へ三人で見舞いに行くことも多かった。このところ疎遠になってる奴がいきなりこんなことをする理由は思い浮かばないけど。
それから親父と姉貴たちも勿論受け取りは可能。ただしやっぱり理由はわからない。
ふ~っと大きく溜息を吐いてぐるりと周りを見回してふと一つのオブジェが目についた。あの像、何か持ってないか? 紙のようなもの。
近づきながら考えてみる。
時計塔を中心にした円形広場。周りにはいくつかのオブジェ。時計の正面に立って俯瞰的に見ると、あのオブジェは5時の位置にあたる。もしかしてあれは……。
側まで寄ってみると、思った通り像が手にしていたのは俺が持っているのと同じメッセージカードだった。しかもこっちはラミネート加工されている。……雨や雪にも対応してるってわけか。なんだか笑えるぞ。
カードを取り、書いてある文字を見る。
『 お か よ ん
ん い く か
し ぎ う よ
く し ち が
IN CORNERROOM GP 』
「…………え?」
またしても暗号。しかもやっぱり稚拙だし。
帰ろうかな、と思わなかったわけじゃない。だけど、ここまで出てきてしまっていたし、手ぶらで帰るのもなんだかなぁ。
そう思って目的地に向かって歩き出した。もしかして結局カードに動かされる俺をも想定しているんだろうか? 差出人に遊ばれている気もするけれど。
「はいはい、ひっかかってあげますよっと」
ひとりブツブツ呟く俺をカップルが横目にみて笑っているような気がして、足早に公園からでた。
それにしても、差出人は一体誰なんだろう?
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