アーカイブ28(sideH) 異界の書

 ある日異界よりもたらされた、一冊の禁書。

 それは記された言語体系が複雑である上、内容が支離滅裂であるため解読は困難を極めている。しかしわずかに読み得た内容のみでも、十分に世界を狂わせる魔書であることが予見された。

 よって現在それは、彼女の神殿で厳重に封印されているという。


 ここでは特別に、その解読出来た一部を紹介しよう。


「その世界は、常識人達の思い込みで成り立っているという説がある

 林檎は皆がそう思い込んでいるから、慎み深く木から落ちる。

 太陽は皆にそう期待されているため、毎朝東から昇っている」


「人々がそのことに気づいてしまった時、その世界はたちまち消え去りもっとはるかに奇怪で不可解なものに成り果てるだろう」


「そういう説だ」


「ちなみに」


「もうそれはすでに一度起きてしまった、という説もある」


 



 彼女達はまだ知らない。

 その本の表紙と帯にはこう書かれていることを。



『異世界ヒッチハイクガイド』


『Don't toLOVEle!(トラブるな!)』

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