第15話 4度目の転校初日の事実(日曜日)
ガタンゴトンガタンゴトン。
ガタンゴトンガタンゴトン。
ガタンゴトンガタンゴトン。
ガタンゴトンガタンゴトン。
電車の走る音が車内に響く。
「はっ!?」
ヒアリはすぐに気がついてあたりを見回す。乗客がまばらな車内、現在はトンネルの中を走っている。スマートフォンで日付を確認すると転校前日。
間違いない。また戻っている。
ヒアリは確信し、荷物をまとめ始めた。電車が駅につき次第、すぐに向かうためだ。
ツキエが言っていた学校の裏庭へ。
――――――
「ツキエちゃん」
ヒアリが息を切らせてたどり着いた学校の裏庭には古ぼけたベンチがあった。
そこにツキエは重苦しい表情で座っている。
「……いつからですか?」
視線を合わさずにただそう言ってくる。ヒアリはすぐにそれがループしていると理解し始めたときのことを聞いているんだとわかり、
「四週間前……っていうと変な感じだけどこの学校に転校したのは3回で明日は4回目になるよ」
「……4週間前」
ツキエはやや思案した後に唇を指でなぞって、
「思い当たるのはぶつかった時ですか……まさかあんなことで?」
ツキエに言われて思い出した。ループに陥る前に確かに階段に落ちそうになったツキエを慌てて抱えようとして顔面衝突している。あれがきっかけだったとツキエは見ているようだ。
「もう一つ。強く戻れと念じてみてください」
「えっと……」
「いつも戻る場所をイメージしてそこにジャンプするように考えればいいだけです」
ヒアリは言われたとおりに強くあの電車の中をイメージする。しかし、何も起きない。どこからか小鳥のさえずりが聞こえてくるだけだった。
「戻る様子はないようですね……そうなると、移ってしまったのはループしても記憶を保持する状態だけですか。いえ、私もまだ記憶は維持しているのでコピーといったほうがいいのかもしれません」
そう誰と相談するわけでもなく、ただ一人でつぶやく。
ヒアリはそんなツキエの前に立ち、
「どういうことなのか教えて。私、何が起きているのか知りたいから」
強い意思でそうツキエに尋ねる。ツキエはしばらく考えた後、
「とりあえず確認しますが、知ってもとてもつらいことです。もしかしたら後悔するかもしれません。それでもいいですか?」
「いいよ。知らないままでいても何も変わらないし、この状況がどうにかできるとも思わないから」
「……わかりました」
ツキエはベンチから立ち上がると、
「一週間後の日曜日、またここに来てください。夜になってから山に登りますので温かい格好をするようにお願いします。あと体力をつけたり山道を登る練習をしておいてください」
「え」
どういうことなのかヒアリは理解できない。しかし、ツキエは構わずに続ける。
「口で説明するより実際に見てもらったほうが手っ取り早いので」
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