第14話 3度目の次の月曜日へ(日曜日)

 三度目の転校初日を終え、なんとか今週も乗り越えた。同じ時間を三度過ごすと流石にボロが出やすくなり、週の後半は予言者みたいな言われ方をすることまであったが。


 そして、もうすぐ月曜日が来る。このままだとまた1週間前の電車の中に戻ってしまうだろう。


 なんとかしなきゃ。そう思いはするが、理由もわからなければ原因も不明だ。これでは何をしていいのかすらわからない。


 今回はベッドには潜らず普段着のまま部屋の明かりをつけて窓から外を覗いていた。もうちょっとしたら地震が起きたのは憶えている。今のところ、時間が戻ってしまう原因にそれが関係しているのではという手がかりしか無い。


 綺麗な月が空に輝いている。そういえば、前々回はツキエが歩いていたが今回はどうだろう。そう思い、路地を見下ろしてみる。


「あっ」


 そこにはマンション前の路地を一人で歩いているツキエの姿があった。ヒアリが三回ループした中で唯一異なる行動を見せている存在。


(もしかしたら……?)


 ヒアリは意を決して、自宅から飛び出し、ツキエの後を追う。だが路地に出てみたがすでにその姿はない。


 歩いていった方へと走る。この先は団地外れにある丘があるはずだ。小さな公園があり、ベンチも設置されている。


 念のため持ち出したスマートフォンの画面を確認する。23時50分。もうすぐ地震が起きる時間だ。それまでに見つけたい。


 やがて息を切らせて丘の上にたどり着く。そこには月明かりに照らされているベンチでうなだれるように座っているツキエの姿があった。


「ツキエ……ちゃん」


 ヒアリは恐る恐る声をかける――だが、同時に地面が小さく揺れ始めた。スマートフォンの時計を確認すると0時1分を指している。時間がない。


 焦り気味のヒアリに対して、ツキエは全く地震の揺れも気にしない感じでゆっくりと顔を上げた。


「……カナデさんじゃないですか。初めてですね、ここで会ったのは。最近私が何かしたつもりでもないのにいつもと違う行動をしていると不思議に思っていましたが。まあそういうことは今までもなかったわけじゃないので、大した変化とは思いませんが」


 淡々と――無気力に淡々とつぶやくツキエ。その声と顔は明らかに疲れ切っているのがわかった。

 ちょっと前のヒアリなら疑問符を浮かべるだけだっただろう。だが、今ならその言葉の意味がはっきりと分かる。


 やがて地震が激しくなり始めた。地鳴りも大きくなり普段の声では届かない。だからヒアリは叫ぶ。


「私知ってるよ! 憶えてるよ! 3週間前にツキエちゃんに挨拶したこと! でもその後は学校に来てなくて挨拶できなかったこと! 3週間前は駅の改札口で出会わなかったけど、今回はすれ違ったこと! 全部憶えてるよ!」

「!?」


 声も裏返ってしまうほどでほとんど絶叫だった。なんとか伝えたい。伝わってほしい。

 そのヒアリの叫びを聞いた途端に、無気力だったツキエの表情がみるみると青ざめていっている。


 地鳴りが更に激しくなる。そんな中、ツキエも叫んだ。


「戻ったら、すぐに学校の裏庭に来てください! そこで待ってます!」


 次の瞬間――

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