第12話 2度目のはずの次の月曜日へ(日曜日)

「一体なにがどうなっているんだろう……」


 ヒアリは次の月曜日に備えて準備を終えた後、ヘッドに潜り一人っきりのマンションの寝室で天井を眺めながら考えていた。


 この一週間の間、それより前の一週間とほとんど同じことが続いた。学校の授業の内容も行事の内容もテレビの番組も天気も。間違いなく二週間前に経験したことをまた経験している。


 しかし、細部では違うこともあった。例えばヒアリが二週間前と違う行動を取ればエリミやクラスメイトたちも違う行動を取った。一方でヒアリが同じ行動を取ると周りの行動も変わらない。


 もう一つ違うことがあった。それは二週間前と違いツキエの姿が見当たらないことだ。一度目の転校初日では席に座っていたが、二度目の転校初日にはいない。それにともなってツキエに関わるクラスメイトや担任の行動にも差異が出ていた。


 一週間考え続けた結果、結論はこれしかなかった。理由は分からないが一週間前に戻っている。それも自分だけ記憶を維持したまま。


「わけがわかんないよ……」


 ポジティブシンキングとみんな仲良くが信条のヒアリだったが、さすがにこの話を他の人にはできなかった。クラスメイトにとっては転校してきたばかりのヒアリがいきなり時間を巻き戻ってきましたなんていえば、変な目でしか見られない。


 だがもう一つの不安がある。時間が巻き戻った理由はわからないが、いつ巻き戻ったかもはっきりしない。

 巻き戻る前は確か今のように眠ろうとしていて、その後何かあったような憶えがあるがどうしても思い出せない。


「このまま寝ちゃっていいのかな」


 そう不安が頭のなかに渦巻いてどうしても眠れない。時計は23時58分を指していた。

 仕方なくヒアリは起き上がり窓から外の満月を眺める。


 そういえば前回もこうやって月を見ていて――そうだ、確か外にツキエが歩いているのが見えた。


 そう思ってマンション沿いの道を見下ろすが、電灯の明かりだけが頼りの路地には特に誰もいない。


 ここでヒアリは気がついた。地面がかすかに揺れている。


「地震?」


 その揺れは段々大きくなりやがて窓ガラスも軋む音を鳴らし始めた――

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