第2話 転校初日(月曜日)
「カナデ・ヒアリです! 今日からよろしくお願いします!」
パチパチパチ。
25人ほどの生徒のいる教室にヒアリの元気な挨拶と拍手が教室に響く。
ヒアリは転校してきたばかりの教室を見回す。縦横五列ずつで25席があり、窓側最後尾と廊下側最後尾に空席があった。
女性の担任教師は軽くヒアリを紹介したのち、
「じゃあカナデさんはとりあえず窓際の一番後ろね」
「はい!」
ヒアリは生き生きとした返事と軽い足取りで指定された席に座った。
その後しばらく授業開始前のホームルームで担任教師が出席を取り始めた。
「ミチビキさん……は今日はまだ来てないのね。特に連絡とかなかったけど遅刻かしら?」
担任は出席簿にそのことを書き記し始めた。
ヒアリは周りを見回すと反対側の廊下側最後尾の席が無人になっている。
(今日中にクラスのみんなには一通り挨拶するつもりだったけど、明日になっちゃうな)
そんなことを考えている内に、担任は出席を取り終えてホームルームが終了。そして、教室から出ていった。教室の中が生徒たちのおしゃべりで騒がしくなる。
するとヒアリの前に座っていた髪の毛を両サイドで小さく結んでいる女子が後ろを振り返り、
「あたし、シマト・エリミよろしく」
「カナデ・ヒアリです。よろしくお願いします、エリミさん」
求めてきた握手にヒアリは応える。
ヒアリの丁寧な態度にエリミは苦笑いしながら手を振り、
「そんなに固くなくてもいいから、同い年だし呼び捨てでいいわよ」
「そう? じゃあエリミちゃん、よろしく!」
「ちゃんづけかい!」
エリミはさらに苦笑してしまった。
その後、しばらくヒアリを見たあとに教室の窓からも見える広大な団地に視線を送りつつ、
「三年になってこんなボロ団地ときったない工場しかない町に転校とか難儀よね。しかも、今年は受験なのに。親の転勤?」
「ううん。一人旅だよ」
「……へ?」
「中学生になってから毎年学校を変えてるんだよ。去年も一昨年も別の学校に通ってて今年はこの学校。高校も毎年変えようかなって。趣味で」
「…………」
エリミはいやいやいやと額に手を当てつつ、
「……毎年学校を変える趣味って何よ。というか一体そんなに簡単に転校できるの?」
「簡単にできるよ。ウチのじーじ――あ、お手伝いさんのおじいさんなんだけどね、こういう話は学校側に寄付をすればすぐに話しを通せるって。具体的には――」
「いやいい聞きたくない。なんかとんでもないことに巻き込まれる気がするから聞かなかったことにする」
エリミは耳を塞いで頭を振るった。
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