百五十六振目 日本刀買い始め(騙されないために)
最近どうにも、オークションで酷い目に遭った話の頻度が増えた気が……。
そんな雑談を刀剣店でしていたところ、やはりそちらでもそうらしい。
ですから今までのまとめになりますが、日本刀を買うにあたって、これだけは最低でも押さえて欲しいことを3つ。
【大原則1】必ず鑑定書のある品を買う
鑑定書にも種類がありますが、「日本美術刀剣保存協会」の保存刀剣、特別保存刀剣、重要刀剣、特別重要刀剣の鑑定書がある品を買いましょう。
それ以外の鑑定書については信憑性云々の前に、店などで相手にされません。なお、日本美術刀剣保存協会の鑑定書であっても、貴重刀剣や特別貴重刀剣などは全くダメです。その貴重刀剣類の鑑定がグダグダなため、鑑定書が改まったという点を理解して下さい。
なお、鞘書きは鑑定ではありません。また鑑定書とセットであるからこそ価値あるものです。寒山鞘書きも偽物が多く、光遜や探山鞘書きも偽物がちらほら。人間国宝研ぎ師の鞘書きは間違いが多く、その他に至っては信頼性は当然として価値もない。
【大原則2】必ず刀剣店で買う
ヤフオクなどのオークションは極めて危険です。鑑定書があっても、出来や状態や健全性が大きく劣る場合が多数です。店頭に出し手に取って見せられない理由があるからこそ、オークションに出されていると思って下さい。
返品はききませんし、仮にトラブルになったとしても、海千山千の裏社会に片足突っ込んだ旗師などが出品者。そんな相手と争っても勝てません。
またネットだけの販売店も危険。
店舗を構えずコストを大幅に下げ、その分だけ値段を下げている……まことしやかな言葉で飾ろうと、どこかで刀剣を保管し売り買いする時点でコストが生じているのは事実。実店を構えられない時点で何らかの理由があるわけで、何かを減らせば何かが減るもので、それが刀に対する信用性や品質になります。
また街の骨董屋や古美術店や質店などの刀剣専門でない店、特に新聞の折り込み広告やテレビCMを行う店類も売り買い共にお勧めはしません。
必ず刀剣をメインに扱う店に足を運んで実物を手にして下さい。
【大原則3】モノにはモノの値段がある
刀剣店でも店によって悪い店、変な品があります。
まず言える事は「高くて悪い品はあっても、安くて良い品は存在しない」、「掘り出し物は適正価格の品」という事です。
俗に言う『掘り出し物根性』がありますが、そうした埋もれた名品を見つけようとする事は無意味です。ないとは言いませんが、宝くじに当たるようなものです。
宝くじで生計を立てようと思う人がいるでしょうか?
宝くじが絶対に当たると思う人がいるでしょうか?
それと同じ事です。
ですから相応の値段を知って、それを目安にすべきです。
保存刀剣であれば七十万前後、特別保存刀剣であれば百二十万前後、重要刀剣であれば二百万以上がモノとしての相場です。流派や時代によって値は変わりますが、その辺りの値段であれば「まともな刀剣店」であれば問題ない範囲です。
しかし、一般常識として七十万が高いのもまた事実。
ですから保存刀剣でも、末古刀や新刀などであれば「まともな刀剣店」であれば四十万でも問題ないです。なお、「まともな刀剣店」に十万や二十万といった刀剣は置かれていませんし、あったとしても安い理由が明確に示されています。
そこをよく考えつつ品と値段を見比べ考えて欲しいです。
と、そんな感じ。
以前は刀剣を手放そうと店に持ち込まれ、そこで偽銘やらボッタクリやらが判明するパターンが多かったのですが。しかし最近は入手直後に怪しんで、確認のため持ち込んで判明する事が多いようです。似ているようですが微妙にニュアンスが違う。
それはさておき、刀剣商も明確な鑑定はしないものの、逆に偽銘や繕い物など粗悪品を見抜く目は優れている。と、言いますか大半の粗悪品は、ある程度慣れると実物を見た瞬間に分かる(逆に言えば画像だけでは刀剣商でも見抜けない)ものです。
店が持ち込まれた品の正体などを告げると……素直にショックを受ける人もいるけれど、何故かそこで逆ギレして店に怒りだす人も(買い取りの店が悪いわけでもないのに)いる。また見るだけ見させて礼も言わずに帰っていく人もいるわけで……。
いやいや、店も時間と労力を費やし対応しているので、それはないと思う。
持ち込まれた良くない品を店が買い取り、その後にどうするかと言えば、偽銘でも何とかなる品であれば銘を消し保存だけでも取って売る。ただし、そうした品なので手間賃などを考えると殆どボランティアに近いらしい。
ただし、大半はどうしようもない刀剣であるため銘を消す手間すら無意味。そうした品を買い取った店がどうするかと言えば――旗師の場所に流され、次の犠牲者を待つ事に。
刀剣店も清廉潔白でないって事です。
なので改めて言いますが、刀剣店の店主が和やか笑顔でも甘く見ない方が良い。たとえば美術館博物館代わりに見物して、そのまま刀剣を手に取らせて貰って楽しむ事に利用すれば……万一刀剣を傷付けた時にどうなるか、よく考えて欲しい。
最近は金属製の指輪をしたまま、胸ポケットにスマホなど入れたまま、金属アクセサリーを身に付けたまま刀を触るそうなので、ふとした拍子に傷つけ数百万の品を買わざるを得なくなっても知りません。
それはさておき。
近頃は店に電話して「ヤフオクで出ている○○という刀はどうでしょうか、買っても大丈夫でしょうか」などと、いきなり尋ねる人がいるそうで……それも面識の無い相手が尋ねてくるそうで……今の世の中は変な人が多いという感想。
もちろん普通の店はトラブルを避けるため「知りません、分かりません、自己責任でどうぞ」と言うしかない。そこそこ親切な店であれば「オークションですか、では止めなさい」と言うだけです。
なぜって出品者は旗師なわけですから、その問い合わせ人がその相手に対し「○○店がダメと言っていた」などと告げる可能性だってある。そうなれば店VS旗師のトラブルになってしまう。
問い合わせ者にそんな事をするつもりがなかろうと、初対面の面識のない相手がどんな人物かなど相手には分からない。つまり信用が無いの信じられるわけがない。だから迂闊なことは言えやしない。
そうした想像力のない人が増えたのか、たんに目立つようになったのか……。
いやしかし、そもそも迷った時に他人の判断を仰ぎ自己判断できない時点で、その人は刀剣に手を出すべきではないと思う。そうやって他人任せをしていれば、必ずいずれどこかで騙され酷い目に遭うものですから。
なお、迷った時は止める。
それが鉄則。
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