百十一振目 日本刀の周りにある品々

■拵え袋

 拵えを入れまして、白鞘は入れません。この袋はだいたい金襴緞子で、西陣織や唐織の袋になります。房紐もついて、見た目豪華……なのですが、袋がかなり長いので収めにくく出しにくく。ただでさえ厚手の織物に折り返して重ねるので嵩張って場所を取ります。

 金色の少ない系で古いものですと柔軟性が出て来ますので、これは使いやすいです。しかし、古いものは保管が悪いとかび臭い……。

 あげく房紐が問題で少し気を抜くと、ぼっさぼさのばらばら酷い状態になります。この房は絹製ですので、当て布をしてアイロンスチームをしますと多少は元に戻りますが完全には戻りません。保管時は紙などで巻いて乱れないようにしておくと良いです。

 刀・脇差し・短刀で長さが違いますので購入時は確認を。


■白鞘袋

 白鞘を入れる袋で、正絹・木綿・アクリルなどあり、無地や縞模様などもありますが大半は大人しい色合いです。やはり刀を休ませる白鞘の袋という事が関係しているかもしれません。

 正絹は手触り良く柔らかで良いのですが、汚れやすい(特に白は)のが難点。木綿は特に問題なく無難でして、これの高級版を使うと一番良いです。アクリルは……これは木刀や竹刀を入れるものと思った方が良いかも。

 保管時はこの袋に入れておきますと、白鞘表面への傷が防げますし、鯉口が緩い場合に抜け出てしまう事も防げ、温度湿度の変化も多少は防いでくれます。面倒でも必ず入れるよう癖づけておいた方が良いです。 

 刀・脇差し・短刀で長さが違いますので購入時は確認を。


■下げ緒

 刀の栗型に取り付け、鞘の落下防止などに使われます。

 正絹・人絹などあり紐の組み方や色は様々です。注意したい点は、あまり安いものを買うとゴワゴワで紐を真っ直ぐ立てると自立するぐらいに固いです。確かに良い下げ緒は固めですが、しなやかさがあって自立するまで固くはありません。

 刀・脇差し・短刀で長さが違いますので購入時は確認を。


■柄糸

 刀の柄に巻く紐です。糸と言いつつ紐です。

 この巻き方種類は様々ありますが、面倒なのでググってください。

 この柄巻きは刀を握った際の滑り止めになります。柄巻きの形を整えるため、中に小さな紙片などが織り込まれていたりしますので……時代劇のように口に含んだ水を拭きかけ湿らせるなどすると、紙片にもよくありません。何より糸が緩む危険性がありますので要注意。

 また、拵えを新調した場合は柄巻きがスカスカのズルズル状態で仕上げてくる職人も(手を抜いているのか下手なのか分かりませんが)いますので要注意です。

 素材も正絹・人絹・木綿・革と様々です。

 正絹は手垢が付きやすいので、木綿系が良いかと思います。なんにせよ、革は止めましょう。特に居合い刀で革は最悪です、手入れが悪いと表面が毛羽立ちボロボロとしますし黴びます。何より! 臭います! それは剣道をやっていた方には、お馴染みの臭いです。革は止めましょう……。


■打ち粉

 刀の手入れといえば、誰もが思い浮かべる粉打ち。ボンボン頭に包まれたもので、刀剣油を完全に除去してくれます。ただし、これは研磨剤という事をお忘れ無く。下手な人がやりますと、徐々に表面が曇って(微細な傷のため)きます。

 中身は研ぎによって生じた微細な粒子を用いるそうで、以前に研ぎ師が自作した打ち粉を使わせて貰った事がありましたが、もう粉の滑らかさからして違い、少しの量で綺麗さっぱり油が取れる素晴らしさでした。しかし、微少量しか作れないため非売品という事です。

 なお、かなり昔に鹿角の粉末が打ち粉として売られたそうです。もちろん、それで刀を拭うと表面は傷だらけの大惨事になるのだそうで。

 あまり怪しい打ち粉には手を出さない方が良いかもしれません。


■鐔箱

 鐔を収める桐箱ですが、鐔の販売品を見ますと桐箱・上桐箱・落し込箱などとの記載がありますが、後者ほど良い品です。

また共箱という表記もありますが、これは制作者が箱に署名捺印したものです。茶碗や陶器系の場合は、共箱か否かで値段が雲泥の差となりますが、鐔関係の場合はあんまり気にされません。無いより有る方が良いとはいえ、現代鐔工であれば共箱があっても2万か3万値上がる程度です。

 ついでにですが、鐔箱にも箱書きがあります。その中で見かけるのが寒山氏による箱書きです。箱表に鐔の種類と題、箱裏に所見と署名となっています。箱書きがあると5万ぐらい高い感じ。なお誰が書いたか分からない(前の所有者がメモ的に書いたもの)などは無価値ですので念のため。

 つでのついでに、こうした箱書き共箱も偽物が多いです。書が偽物であれば、当然ながら中身も偽物。書が本物でも、合わせ箱という事もあって中身が入れ替わっている場合もある。

 そして現代の桐箱は……これが、あんまり出来が良くないです。

1)蓋がゆるゆる。全く締らずパッカパカで簡単に外れてしまう。

2)蓋がきつきつ。外すためには両手で持ち頑張って引っぱらねばならない。

3)そもそも閉まらない。中に何もないと閉まりますが、鐔を入れ布団を入れると蓋が浮いてしまう。

4)ささくれ立つ。何回か開閉すると、合わせの木部が削れ折れて欠損してくる。

 では古い桐箱はどうかと言えば(もしかすると年月を経たせいかもしれませんが)、スッと蓋が落ちてピタッと収まり、軽く持ち上げても離れず、しかし力を入れるとスッと蓋が持ち上がって外れる。この閉まり具合が絶妙で、何とも言えず良いです。また中の切羽台も竹串で止めていたりと、細かな点まで配慮されています。

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