八十八振目 重要刀剣の図譜とか証書とか
重要刀剣は鑑定書ではなく、指定書&図譜になります。
保存・特保の鑑定書は黄土色の厚紙で半分に折り、また半分に折りで橙色の封筒に収められています。
対して重要指定書は黄色のやや厚紙でして、それが筒(卒業証書や賞状を入れる深緑のあれ)に入ってます。厚紙なので弾力が強く筒の中にぴっちり張り付き取り出しにくい……そのため、取り出す際に内側に巻き込んだ端の角をつまんで引っ張る人が多く、その角が傷んでいる事が多いです。
古い証書などは弾力が低下している事もあり、丸めたり広げたりで縦皺がいっぱいで皺だらけというものもある。
指定書は筒に入れっぱなしのため、いちいち取り出し目にする機会も少ない。むしろ店頭で重要刀剣と照明するため展示される場合が多いかと。これは鑑定書でも同じですね。
指定書なので記された内容も素っ気なく、達筆な字も読みづらい(これからは印刷になるそうなので、少し読みやすくなるかな?)。
なので箪笥の奥底に放り込まれ……紛失しやすい。
紛失すると1度だけ証明書なるものが発行されます。
ただし指定書とは見た目も色も違うもので、しかも指定書と証明書を利用した詐欺(指定書を無くしたとして申請すれば、あら不思議。重要刀剣が二本になる)も多いため、証明書になった刀は値段設定が低め。あげく、なかなか売れないという難点がありまして、委託販売など頼めば、ずーっと売れ残ります。
指定書を無くさないようにしましょう。
次に図譜ですが、これも丸まって指定書と一緒に筒に収められています。
ここに細かな情報が記され、押形(場合によっては写真)と説明文が両面で印刷されています。なお、押形側が表です。
冊子になった時も同じ並びで両面掲載なので読みずらい。ついでに言いますと、冊子が高すぎ……。
図譜の記載内容。
1.押形
1ページを使用し右側に茎と下半、左側に鋒と上半を並べる。
押形であって写真ではないわけで……初期や中期の図譜は、かなり適当です。
足や葉が盛んに入った刃文が、ただの直刃に描かれていたり。
丁子刃も妙に派手派手に描かれていたり。
これは別の刀ではないのか!? というぐらいに違うものもあるので図譜の押形は「あまり信用してはいけない」というものです。
なお、稀に写真という場合もあります。彫りが見事なものに写真が多いですが、そうでないものもある。区分はよく分かりません。
2.説明文
1)指定年月日、第〇回重要刀剣指定。
2)種別(刀・脇差・短刀など)と、銘or無銘極めが記され、「一口」と書かれます。下に申請者の所在都道府県と名前が記され……個人情報保護のため一時消えましたが、最近は名前だけ復活。
3)法量、形状、鍛、刃文、帽子、彫物(ある場合のみ)、茎などの情報。
そうした情報が記載されますが、一番欲しい情報の重ねは記載されません。
4)説明文
古い図譜の書き出しは「○○在銘の太刀である」「大磨上無銘の刀で○○と鑑せられる」「○○の作である」などとあって、刀工や流派の来歴などを説明。
ただし、平成に入って少しすると上記のような書き出しは見られなくなり、刀工や流派の来歴が紹介されます。来歴が紹介された次に「この刀は」と書き出し(第35回ごろから「本作は」が出だす)があって、指定刀そのものについての解説や説明がなされます。
5)伝来
古い図譜では伝来が別個に記されますが、今は説明文の最後に付け加えられる事が多いです。
上記の4)にある説明文ですが、初期の文章が少なく50文字を下回る場合もあります。しかし、近年のものは文章が多くなり500文字近くになります。
文字量が十倍になった理由は! 時代の流れとともに刀剣研究が進み詳細な記述がなされるようになった……という理由では全くありません。
ただ単に「いっぱい文字のある方が、貰った人も嬉しいから」といった理由。
しょうもないと言ってはいけません。
鑑定料で二十数万を支払って、一行だけしか書かれないと文句も言いたくなる人も多いわけでして。きっと日刀保も苦労したのだと思います。
概ね第40回頃(バブル期頃で刀剣ブームが巻き起こった頃)以降から文字数が増えだしています。
最近のセオリーは来歴を200文字少し入れ、その刀についての説明で上記3)の内容を冗長的に文字として表し、最後にちょこっと感想や所見を入れ300文字弱となるのがセオリーです。
その感想や所見については、また別で。
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