八十七振目 日本刀の値段お値段相場感

 日本刀の普及を妨げる一要員とは、相場が分からない点かと思います。

 車であればポルシェやランボルギーニ(適当に高そうなイメージとして)の中古車が10万円で売られていたら誰だって怪しむはず。事故車か難ありかと想像し手を出さないと思います。

 しかし日本刀の場合、何が幾らでどうなるのかの雰囲気すら分からない。これまで個別に値段に触れてきた事は、そうした理由あっての事です。


 ひと昔前に比べると随分と値下がりしていますが、値段は二極化しています。重要刀剣でも脇物鍛冶や流派極めや直刃系は値下がりし、著名鍛冶や在銘や華やかな丁子刃は高止まりしているという状況。

 さらに作刀時期でも鎌倉期や南北朝期が高く、室町期以降は現代に近づくにつれ安くなる傾向もあります。各店舗のスタンスや、さらには暴利や偽物もあります。

 なので値段について一概に言うのは難しい。

 でも、ざくっとした雰囲気で値段について触れてみたいと思います。もちろん凄く大雑把な雰囲気でしかありません。とりあえず、こんな程度(でも高くなることはあっても、安くなることはない)と思っていただければ。


例1 全体の感覚

 10万以下 偽銘、錆身、難あり、場合によっては日本刀でない場合も

 30万以下 無保障の場合、保存がちらほらと

 50万以下 保存であればこれぐらい。でもまだまだ危ない刀が多い。

 100万以下 特保の不出来、特保になれそうな保存

 150万付近 特保の上出来、人気のない重要

 200万以下 重要無銘流派極め、直刃の重要、重要になれそうな特保

 300万付近 重要無銘個銘極め、丁子刃の重要、店が重要になると確信する特保

 300万以上 在銘重要など、人気や出来栄えにより値が上昇

 1000万以上 無銘特重、店が特重になると確信する重要

 1500万以上 在銘特重

 参考2000万円以上 重要文化財、重要美術品に指定されている

 参考4000万円以上 なんらかの歴史的由来や号がある


例2 よくある不人気古刀の無銘など

 50万付近 保存

 80万以下 不出来な特保

 100万以下 そこそこな特保

 150万以下 上出来な特保

 200万以下 重要の中で下位

 300万以下 重要の中で上位


例3 著名人気刀の例として新藤五国光

 100万以下 100%偽物

 150万以下 再刃

 400万付近 無銘特保

 400万以上 在銘特保、店が重要になると確信した無銘特保

 600万以上 無銘重要

 1000万以上 在銘重要

 2000万以上 重要美術品


例4 著名人気刀の例として吉光

 500万以下 ほぼ偽物

 1000万以上 在銘特保のやや不出来

 2000万以上 在銘重要の並

 3000万以上 在銘重要の上出来

 4000万以上 歴史的由来と号がある


 といった感じで、著名かどうかで値動きはかなり違います。

 江義弘の刀であれば無銘特保でも800万近いですし、脇差しでも600万はします。清麿であれば無銘でも800万しますし、在銘であれば2000万します。

 そして流派極めの青江のように、同じ重要でも800万、400万、200万と幅があるパターンもあるので一概には言えません。

 結局は値段だけで判断せず、必ず実物を手に取り眺め観て、納得してから高いか安いかを判断せねばなりません。

 もし初めて刀を買うのであれば150万付近の特保を選ぶとお得です。楽しめて目も養えます。上手く重要にでもなれば差し引きトントンで手放せる可能性がありますので。


 また世情の人気によっても値段は上下します。

 それは今も昔も変わらず。昔は時代劇で同田貫が使われた時は、それが値上がる。今はゲームで注目された刀が値上がったりしてますが……そうした値段はブームが終わると同時に値下がりするので注意が必要です。

 なお、形状による人気もあります。

 現代で好まれる形状は「大鋒」になります。これは時代による好みなので、そう簡単には値段が変化しませんが……結局はブームの一つなので注意が必要かも。

 ここで大鋒について。

 元々は南北朝期に刃長が長くなった事に対応し身幅が広がり、結果として鋒が延びたものです。ですから、これを定寸にした大磨上無銘の大鋒は寸胴・不格好というものが過去の美意識でした。

 でも現代では豪壮な雰囲気があり格好良いとされます。

 現代刀工は好んで大鋒をつくりますが、全体のバランスが上手い人もいれば、どうにも不格好な人もいて……なかなか、刀工の技量を試される姿かなと思います。


 人気も値段も時代により変遷していく……のでしょうが、よっぽど景気がよくならない限り日本刀が値上がることはないでしょうね。

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