五十六振目 日本刀を売る時
子々孫々まで所有刀を伝えられるような人は別として、普通はそれを手放す日は必ず来ます。
新しい刀の購入資金にしたり、事業が苦しくなって手放す、単に飽きた。理由はいろいろながら、いつかはお別れが来るわけです。
そうなると売らねばなりません。
この時に注意したいのが、必ず刀剣専門店に持って行く事です。
普通の骨董屋であまりに安いので売るのを止め、刀剣店に持って行ったら値段が倍になって驚いたという話もあります。
ただしこれは、骨董屋が悪いわけではないです。
骨董屋は日本刀の専門ではありませんので、日本刀全般として広く浅く査定。一方で刀剣屋は刀工銘や出来栄え状態を考慮して査定。
そのため値段に違いが出るわけです。
もちろん刀剣屋でも店によって値段が上下して、70万の店もあれば120万の店もある……遺品売却などで、相手が素人とみれば買い叩く店もあります。面倒でも必ず何店舗かで確認すべき。
他店で大体の値段を把握し、本命の店で言われた値段を伝えて売るという手もありますが、これは別に店側は嫌がったりしません。むしろ、値段が決めやすくて歓迎されます。
ただし、ここで嘘を言わない。
「向こうの店では(言われた値段×1.5倍)だった」などと吹っかけたとしても……どの店がどれぐらいで買うかの算段は各店舗とも持っています。なにせ刀剣業界は狭いので。そうなると「どうぞ、その店で売って下さい」と言われ商談不成立となります。
売る場合は必ず、登録証、拵えなどの鞘、鑑定書(重要刀剣の場合は指定書と説明文)、折紙、その他(過去に展示された刀剣であれば目録など)を付けます。どれも、あるかないかで大幅に値段が違いますので。
必要な品が足りないばかりに安くなってしまうので充分に確認を。
そもそも鑑定書がない場合は、せめて保存刀剣だけは取っておきたいところ。これがないと、本当に買い叩かれてしまう……。
家族に内緒でこっそり刀を買った場合は、購入額をメモして残しておきましょう。本人が亡くなった後に家族が知らぬまま安く売ってしまう場合もありますので。
なお、安くしか売れない場合もあります。
たとえば並品を高く買っていた場合。有名な銘につられ、銘だけで買った場合。店が売る際は問題にもされなかった疵や欠点がある場合。
そもそも偽物だったというパターンもありまして、日本美術刀剣保存協会の重要刀剣で思っていたら、名前が微妙に違う存在しない協会の重要刀剣だったという場合もあり、もちろん刀は偽物という場合。
そして、売れない場合として……登録証が偽物であった場合。
【登録証の偽物について】
刀剣店で伺った話なので私自身が直接知る事ではありません。内容としては、登録証は紙だけのため偽造も簡単。特に昭和40年代は登録証の偽造団が暗躍していた。当時は登録証の書き換えをしない人が多かった。偽登録証の寸法や銘、偽鑑定書の寸法や銘、偽銘の刀とのセットで騙されて買っている。その年代に買った人が高齢化に伴いボチボチ売りだす頃合いなので注意しましょう。
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