五十三振目 日本刀を写真だけで判断しない

 刀剣店はホームページを持ち、そこで販売もしています。

 で、そこに日本刀の写真を載せているのですが、各店とも少しでも良さを伝えようと、写し方を様々に工夫しています。

 自社で撮影する店、外注する店、カメラでなく大型スキャナーを使う店と様々。どこをどう写し、どれだけの情報を載せるかも異なります。店によって妙に刀身が黒かったり白かったり青かったり。

 本当はもっと細かくしっかり写真を載せたいものの……あまりに載せすぎると、その画像をダウンロードされてしまう。または購入した客に画像を消せと文句を言われたり……とまあ、なかなかに苦労が絶えないようで。

 なんにせよ写真の出し方に店のスタンスが分かります。そうした目で店のHPを見ると、なかなかに面白いかも。


 日本刀にも写真写りの良い悪いがあります。

 写りが悪いと魅力が伝わらないのですが、店としてはむしろ写りが良すぎる方が困る。良すぎる写真を見て購入したものの、手元に届いて……何コレと返品する流れがあるわけですね。

 店としては、せめて電話が欲しいそう。

 電話であれば、ひと言申し添える事ができますが、完全にネットだけでのやり取りとなると微妙なニュアンスを伝える事が難しいわけです。発送しながら「こいつは戻ってくるな……」と思って送り出すと、「やっぱりか……」となるそうで。


 日本刀の写真ですが、実物とは違って見えます。また、細部も見落としがち。

 信用のおける店であっても、肌荒れ部分や小疵などは分かり難い。ただし看板と店舗を構えた刀剣商でもかなり怪しいところはありますが……。

 なんにせよ信用出来る刀剣商の写真ですら実物とは違って見えてしまう、いわんやそうでない販売箇所の写真など実物と大きくかけ離れている場合もあります。

 刀身に当てる光を強めとしてコントラストをはっきりさせ、茎に当てる光を工夫する。それだけで、もう本当に魅力的な刀に見えてしまう場合も。

 さらに、欠点となる箇所を故意に写してない場合もある。

 つまり埋め金部分の画像が曖昧であったり、刃欠け部分を隅っこに持って行き目が届き難くしたり、反射光を傷の上に持ってきたり、欠点付近だけピントがボケていたり……。


 刀剣商ですら写真のみでは真贋や出来が分からない場合もあります。そうなると趣味人で、もう見抜くことは殆ど難しい。というわけで、写真を見る前にまずはこんな点を確認してみましょう。

1)まず説明文

「写真を良く確認し自身の判断にて、当方の所見と説明を参考に検討の上で、自身の責任で購入して下さい」といった類の言葉があるかどうか。刀を扱う店であれば、写真と実物が違う事はよく理解していますので、こんな事は書きません。

2)関係ない写真

 唐突に登場する国宝や特重などの写真、重要文化財や重要美術品の本の抜粋、古刀剣書の抜粋など。これは印象操作のためで、それだけ商品に自信がないか怪しい事の証左です。

3)登録証の写真

 これは記された銘文を見せるためです。もちろん登録証は茎の状態を示すのみで、銘の真贋は証明しません。しかし、知らずに見れば公的機関が本物と証明しているように見えるでしょう。

4)写真の数

 異常に少ない、異常に多い。少ない場合は情報を与えず、多い場合は情報過多で判断を迷わせます。刀剣商のHPを何件か閲覧すれば、普通は写真数がどれぐらいか確認できます。

5)ピントの甘さ

 一見して写真がしっかり掲載されているようで、中心部のみピントが合って端の映りが悪い。こうなると、見た気になって実際には見えてません。

6)上記の5に加え

 反射光が写真中央に大きく存在する。肝心のピントの合った部分の大半が光の中という事で、大半が隠され見えなくなっています。

7)茎の写真

 刀身の写真は多数あるものの、茎の写真が妙に少ない。普通は刀身と茎の写真はバランス良く配置しておき、きちんと表示させています。


 でもまあ写真を見るまでもなく、店で売れば一千万円を超える刀が数十万円で売られる時点で怪しいと思うべきなのですが……。

 日本刀を買う場合に写真だけで判断するのは危険。

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