三十二振目 特別重要刀剣になるには
まず言えるのは「諦めましょう」という事です。
悲しい事ですが我々普通の人が普通に手にできる日本刀は、そこにまで辿り着けません。特別重要刀剣は日本刀のトップに君臨する最高のため、選ばれるには並大抵の作ではないという事です。
金にあかせて名刀を買い漁り申請しまくる財力があれば別でしょうが、普通の人では諦めた方が良いという事です。もっとも、果てない夢を追いかけ何度も申請して鑑定料を貢ぐわけですが……。
重要刀剣に選ばれる時点で名刀ですから、それら名刀を見ると「これなら特重になるかも」と思ってしまうわけですが、その重要刀剣の中でも上下があります。まず、その上下をしっかりと認識せねばなりません。でないと、何度も申請しては落ちてを繰り返します(これは重要刀剣の申請でも同じ)。
特重ともなると典型であるかという事も重要視されます。
すなわち特重となれば、その銘における指標にされるわけですから、典型から外れた刃文や姿形であれば当然厳しくなります。
本阿弥の古折紙などがあると強力なプッシュにはなるそうです。
寸法も重要で姿形が良いか、という事で短い状態であれば姿が悪い。もちろん無銘大磨上であればその時点で減点ですから、もうかなり厳しいわけです。
重ねもガシッとして研ぎ減りが少しも無い。地刃も
具体的な例でいきますと……長さ二尺四寸で鎌倉時代中期作。重ねが0.8cmあって刃肉たっぷりで蛤刃。刃文も極めて健全で緩みうるみは皆無。帽子も殆ど減り無し。地肌の出来が素晴らしく、状態も良く鍛え疵は少しも無い。
そんな状態でも刃文の表が典型で、裏が少し外れ気味という事で「ちょっと厳しいかも」というぐらいです。
よく言われるのが、特重になる日本刀は見た瞬間に「おおっ!」と思うようなものでなければ駄目という事でしょうか。それぐらいにインパクトがあって圧倒されなければ最初から諦めた方が良いかと。
そんな作は手に入らない……という事もないから日本刀は怖い。
つい最近も鑑定書無しの状態で発見され、保存から特重まで一気に駆け上がった(こうした合格を八艘跳びと言うそうな)南北朝期の大太刀があったそうで。いや、羨ましい。
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