二十一振目 日本刀の値段をおおよそで2

 日本刀の値段とは難しいもので、状態など様々な要件によって値段は異なります。もちろん店側も苦労していて、10万円違うだけで全く売れなくなるため気を遣っているそうです。

 それはさておき、値段によって何がどう違うかという事についてです。


 備前系の短刀制作で群を抜いた名工を例として、その状態による値段の違いです。もちろん全て短刀在銘品となります。

 800万円の品は鉄明るく見事な彫りがあり重ね厚く地刃ともに健全で出来が良い。

 500万円の品は鉄明るく彫りはなく重ねやや薄く地は良いが刃話少し減り気味。

 300万円の品は銘に年紀があって重ね厚いが……刃が摩耗して存在しない。茎も弄られている。それでも在銘品という事で、この値段。

 100万円の品は再刃(一度火事にあって刃を付け直したもの)。

 これが状態から見た値段の違いです。同じ作者であっても、状態が異なればこれだけ違います。もちろん高い方が出来がよく惚れ惚れとします。名工作であるだけに、銘だけでも欲しいという事で値段幅も広いのでしょう。


 次は、山城のとある流派の始祖を例とします。すべて太刀で無銘品となります。

 500万円の品はやや研ぎ減りがあり、ぱっと見でも覇気を感じられません。

 800万円の品は見た瞬間に名品と感じられ、がっしりと健全です。

 1000万円の品は確かに良品ながら800万円との差は感じられません。

 これが出来具合だけから見た場合の値段の違いです。出来が違えば値段は違うのですが……ここで問題が、800万と1000万の差が書いているように見てもわからない。しかも、どの店でもこれは名品で特別重要が狙えると説明してます。500万のものは絶対に無理でしょうが……。

 出来具合による値段差について説明したいのですが、状態のように明確でないだけに店の思惑が絡み一番難しい。高いから絶対に良いと言いきれないわけです。


 次に、鑑定ランクによる値段の違いを、とある一本の刀を例に見て見ましょう。

 これは店頭売り価格が、90万円→130万円→230万円と変化しました。これが、鑑定ランクの違いで発生した現象です。

 もちろん鑑定ランクが上がるほど値段が上がっていくわけです。

 そうなると誰しも思うのが「下位ランク鑑定で購入し上位ランク鑑定で売れば儲かるのでは?」という事です。結論だけ見ればそうでしょうが、ここには――大きな間違いと、大きなリスクがあります。

1.保存刀剣ランク

 90万円の価値があります。この状態での売却値は買い叩かれ50万円以下。

 次ランク鑑定に合格するかは全くの不明。

 合格するかどうかは別として、鑑定費と運送費で数万円が必要となります。

2.特別保存刀剣ランク

 130万円の価値になりました。なお、刀の種類によっては保存刀剣と大差ない値段の場合もあります。とりあえず130万円のものを売却すると70万円。

 次ランク鑑定に合格するかは不明ですが、より鑑定は厳しくなります。

3.重要刀剣ランク

 230万円の価値になりました。

 ここで売却すると120万円程度。ようやく黒字に……ではありません。上位ランク合格時の鑑定費用は20万円ちょい。これまでの鑑定額と運送費を考慮すると、ほぼトントン。まったく儲からない。

 なお脇差しや、新刀の場合は審査がより厳しくなります。

4.最上位ランク

 おまけで書きますが、ここになると1000万円ぐらいの価値です。

 これで売却すれば500万円は固い! これなら大黒字は間違いない! しかし、最上位合格は非常に狭き門です。よほどの名品で無ければ合格しません。

 名のある名物であったり、本阿弥家の折紙があったり、折紙があったとして誰がどう見ても素晴らしい品でなければ駄目。そんなものが下位ランクで売られているでしょうか? 普通に考えれば店側がやってますね。


 というわけで、話は大幅に脱線しましたが値段の違いでした。

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