十八振目 日本刀の握り方
白鞘など観賞用ではなく、居合いや剣術としての握り方についてです。
握るなんて簡単……と思われますが、これがとても難しい。映画や時代劇、それからイラストなど見ていると、それでいいのか? といった握りも意外に多い。
一般的に日本刀の握りは茶巾(茶道において腕を拭く布)絞りと言われます。これは右手を上側に左手を下側として、内側に捻るように絞るものです。
それと同じようにして、内側にきゅっと絞るように持ちます。
もちろん、本当に柄を絞ったりはしません。偶に勘違いして本当に絞りながら持つ人がいますが、あくまでも絞った時の型で持ちます。
しかし、茶巾絞りの型では分かり難い。
ですから、現代で身近なスマホで表現(いわば「スマホ握り」)。
片手スマホの親指操作の状態でスマホを持ちます。そのままスマホを刀に見立て、身体と直角にさせます。こうすると、母指球から小指球にて上から抑え、下から指で固定する持ち方になります。反対の手も、同じように母指球から小指球で上から抑えるように持ちます。
やってみるとどうでしょう。
右手と左手を一直線に並べるには手首を限界まで捻らねばならず、そのまま振り上げ振り下ろしなどすると、かなり無理があるため痛くなります。
これが刀の握りです。
なのですが、これでは苦しいため多くは楽な持ち方をしてしまい、上から親指一本で抑えてしまいます。これを「横から持つ」と言って、駄目な持ち方の典型です。
しかしながら見た目としては、この横から持つ姿の方が格好良いため、特にイラストなどでは多様されています……ですが、これで試斬などすると親指を痛める。居合いの稽古で振っているだけでも、一時間やれば親指が強張ってしまう。
それは当然というもので、全力斬った瞬間や振った瞬間の反動を親指だけで受け止めるのですから。
といった事で、正しい握りは手の平全体で包むように、又は手の平で挟み衝撃を手の全体で受け止めるようにします。
次は持つ位置です。
右手は鐔から指一本程度は開け、人差し指が縁の金具に触れず、小指は目貫に触れる。左手は拳一つ開けた位置として目貫を押さえる。
ですが、これは流派や人によって違います。
たとえば右手と左手の開ける距離でもまちまち。ある試斬家は右手と左手は触れるべきと言いますし、または某流派の師範は左手で柄の一番下を持てとも言います。
なので、あくまでも一つの例という事で。
ただ言えるのは、右手が鐔にピッタリついていては駄目という事。見た目は格好良く、イラストなどではよくありますが、ここに少し空間がなければ振り下ろす際に動きが強張り、取り回しに難が出ますので。
次に握る力ですが、「卵を握るように」よく言われます。
これまた勘違いが多くて、「卵を握る=優しく握る」と思う人がいます。日本刀を振り下ろし、ぴたりと止めた瞬間にぶれが生じるのは大抵これが原因。
卵を握るといった真意については分かりませんが、「握らずに握る」といったところでしょうか。つまり渾身の力で握りしめるのではなく一定の力でホールドしろという事ではないかと。
なお、握りが甘いとどうなるかと言えば――横から伸びた手が、いきなり鐔を押さつけてきた。次の瞬間にはもう一方の手が柄尻を引く。気付けばテコの原理で、己の日本刀は奪い取られていた。奪われた己の愛刀が刃を煌めかせる。その迫る姿に握りの甘さを後悔していた――となるかもしれないわけです。
何事も基本が一番難しい。
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