十振目 目釘穴に眼を釘づけに

 目釘穴とは、茎にある穴の事です。

 茎は柄に収めますが、そこで竹製の目釘を通し固定。ぐっ、と押し込みしっかり固定。抜く時には目釘抜きを使用して外します。


 応永以前に開けられた穴はたがねを使い、手作業でコツコツと開けられていました。このため形状が○ではなく歪んでいます。しかも両側から開けてくるため、中央に向かって両側から窄まった状態です。この〇でない部分が実に良い。

 それに対し、応永以降はロクロを使うため形状が真円の〇。断面も一直線となって、穴の開け終わり側で多少鉄が盛り上がり、環のようになっています。ちょっと味気ない。


 目釘穴の位置は、区(刃の終わりの部分)から刀は指三本、太刀は指四本ほど。

 茎に穴一つが基本ですが、古い刀は外装などを作り直すため、これに伴い穴を開け直したりします。または擦り上げによって刀を短くした場合も穴を開けます。そんなわけで、古い刀は穴が二つ三つとあります。

 特に穴が二つ重なったものをダルマと呼びますが、見た目ちょっと可愛い。

 目釘穴の変遷が時代を感じさせます。ですが、昔は穴が少ない方が刀が健全だとありがたられたとか。ただし、今はあまり気にされないようですが。

 なお茎尻(一番下)に小さく開いたものは、控え目釘穴と呼ばれます。実戦で使用された刀など、目釘を一つ増やしておき耐久性を向上させていたためです。


 銘に目釘穴がかかっている場合も多いです。

 「〇光」や、「〇元」といった感じで、一文字目の半分程度にかかっていたりします。どうせなら全部残しておけば良かったのに……とは思いますが何か理由があるのかもしれません。


 刀鍛冶は銘を切った後に目釘穴を開けますので、どちらが先か観察する事で銘の真贋が鑑定されます。が……正直言って、古い刀を見てもさっぱり分からない。

 それよりは、目釘穴の中の錆び具合を注目した方が分かりやすいかも。

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