下準備
「カガロがやられたようですね。昨晩からテレパシーで連絡が取れません」
「まあそうじゃろうな。あの直情型では、エルガイアに勝てない」
ギメガミに言葉に、メッツラは無感動に答えた。
「じゃが、時間は作れた。おそらくエルガイアもしばらくは力を使ってまともに動けないじゃろうて」
「…………」
「さて、もう一件……あそこじゃ」
「はい」
場所は山の中。その中にぽつんと佇む大きな木造家。
「うむうむ。作業は順調そうじゃな」
「そのようですね」
家の玄関に立つと、メッツラは杖で玄関を叩き。「誰かおらぬか?」と呼びかけた。
すると、タンクトップにねじりハチマキ、ひげの生えた大柄な男が現れた。
「何の用だい? ……爺さん。こちとら花火大会の準備で忙しいんだ」
不機嫌そうに頭をガリガリとかく男。
「ここに、花火という爆弾を作っていると聞いたのじゃが」
「ああ? 爆弾だと?」
不機嫌そうな男。カチンと来たのか声を張り上げる。
「おっと、口が滑ってしまったようじゃな。忘れてくれ」
「おい爺さん、まさか俺の花火をかっぱらうつもりじゃねえだろうな?」
「ほっほっほ。盗むを働くなどと、そんなことはせねぬよ。この体で、花火を大量に持っていけると思うかね?」
「じゃあなんだよ? 爺さん、冷やかしならとっととうせてくれ」
「まあ、ワシの目を見てくれ。ほれ、悪い事をする眼に見えるかの?」
「あん?」
メッツラの目を見る男。メッツラの眼が、急に横に振動し始めた。
ぐらぐらと揺れる眼球。その眼に男は、どんどん魅了されて体の力を失う。
「ワシの言う事を聞いてもらおうか」
「……ああ、わかった」
催眠術にかかったように、花火職人の男は、すんなりと返事をした。
「よいか、早急にできる限り、花火の玉を大量に作れ、一睡もするな。そしてこの日この場所へ迅速に運び込むのじゃ」
「わかった……」
「さて、上がらせてもらうぞい、ここまで来るのに疲れてしまった」
「ああ、入ってくれ」
「ほっほっほっほっほ。それじゃあ、この家の住人を催眠にかけるぞい」
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