第七章 人として、人のあり方として

カガロ

「ふぅ、ふぅ。ふぅ……」

 カガロが頭を抱えて苦しんでいた。

 バイクが一緒に入っている車庫の中で、髪を引っこ抜かんばかりに頭を抱えている。


「カガロさん」

「うっ!」


 急な声と人間の臭い。


「どうしたんすか?」


 かくまってくれている暴走族のメンバー、越智田と百地。

 二人が食料を持って現れた。


「ふー、ふー、ふぅ……」


 ギロリと睨まれ、びくりとする二人。

 だが、すぐに視線を下に向ける。


「なんでもねぇよ。なんでもねぇ……」

「調子悪いんすか?」

「なんでもねえよ」


 できる限り衝動を押さえつけ、大きく深呼吸をするカガロ。


「飯か」

「はい、どうぞ」

「ありがとよ」


 こんなものでは駄目だ。早く食わなければ。


 だが、食えない。まだ思考も回り、理性が歯止めをきかせている。

 まだ大丈夫だ。


 ビニール袋に入ったパンや弁当、飲み物を受け取り、それをがっつくカガロ。


「今夜も走らせろよ」


 去り際の二人に言う。


「ええ分かってますよ。ただ東海道線制覇が控えてますから、無茶な運転はしないでくださいね」


「ああ、わかっている」


 ああ、どうにかしなければ。


 この衝動を。人間を食べたいという衝動をどうにかしなければ……。


 カガロはやけくぞ気味に、もらった食料をむさぼった。

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