Epilogue

再臨、そして始まり―Re:Start―

 3週間後。


 空は曇天に包まれ、今にも雨が降りそうだった。

 そんな市街の中、機動隊が横一列にシールドを立てて防壁を作っていた。

 拡声器を持った舘山寺さんが、向かい合っているミュータントたちに呼びかけた。


「ミュータントに告ぐ、今すぐ投降をしていただきたい。我々は君達の身体的欠陥を知っている。そして近い将来、君達が同属である人間を食べずに済む未来を作る準備をしている。大人しく投降し交渉の場にたって欲しい」


 ミュータント、古代ネパールから時を超えて復活した人類の突然変異種たち。


 七人のミュータントたちが再び日本にやってきて、今、市街のど真ん中を陣取っていた。


 その中には様々な容姿をしたものたちばかりだった。体格の大小もそうだが、きわめて人からかけ離れた特殊な体を持っている者もいた。


 その中の一人、赤銅色で巨大な体格のアムタウ族が前に出て言ってきた。


「我らの要求は二つ! この島国の全権限をよこせ! 我らが『帝王様』は人類全てを支配すると宣言した! そして二つ目の要求は、エルガイアの命を差し出せ!」


「く……大人しく投降する気はないのか? 我々は交渉の場を設けることができる」


「そんなものはいらん! 弱き人類よ! 我らに従い、我らの糧となれ!」


 まったく会話になっていない。

 舘山寺さんが持っている拡声器を、そっと押さえて下げさせる。


「拓真君……」


 俺は静かに首を横に振った。

 そして機動隊員たちの立てているシールドの間を通って前に出た。


 全身に生傷、内出血によるアザがそこかしこに出来ていた。だが確実に、体は少しだけ筋肉質になり、鍛えられた体になった。


「俺がエルガイアだ!」


 赤銅色のアムタウ族が「ほう」と声を上げ、をこちらを上から下まで眺めた。


「どうれ、エルガイアよ! 一度腕比べといこうか? 挨拶代わりだ!」

「ああ、わかった」


 目を閉じる。

 まっすぐ伸ばした右腕を左から右へゆっくり水平に振る。

 ――地平の彼方に。

 そして右腕を頭上にかざす。

 ――太陽は昇る。

 持ち上げた右腕をぐっと握り締め。

 ――この腕は、太陽すらも掴む腕だ!


「変身! エルガイア!」


 ごきりぐぎりごきごきごき 


 エルガイアの変身が完了する。


「フォーム、フレイム!」


 叫びと共に、体中にあるプロテクター状の皮膚が炎の赤に染まった。


「我が名はジャングル! アムタウ族の戦士!」

「俺はこの時代のエルガイア、結崎拓真だ!」

「行くぞ!」

「ああ、来い!」


 赤銅色の戦士ジャングルとほぼ同時に走り出す。

「はあああああああああッ!」

 跳躍し、右腕を高く挙げる。

「はあっ!」

 その炎の拳をジャングルめがけて突き出した


             ―終―

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