決意―Determination―

「舘山寺さん!」


 戻ってきた木場が、俺の隣に並んで持っていた拳銃をアスラーダに向ける。


 アスラーダは苦悩していた。「ありえない」「そんな馬鹿な」とぶつぶつと呟いている。


 木場が聞いてくる。

「何かあったんですか?」

「ちょっと話をな」

 木場と一緒に銃をアスラーダに構えつつ、アスラーダに言い放った。

「たとえどんなに欲したとしても、お前の求める戦士という存在は、もうこの世にいない。剣を振るい盾を持ち弓矢を放つような原始的な時代はもうとっくに終わっているんだ」


「…………」


 アスラーダが頭を抱えたまま黙りこくった。木場のほうもどんな話をしたのか察したらしく、黙ったままアスラーダへ向けて銃口を放さなかった。

 そして思い出したように、アスラーダが顔を上げた。

 アスラーダがポツリと呟く。


「……エルガイア」


 まるで、一つ地の希望でも見たかのように、アスラーダは自身を取り戻した。


「まだ、エルガイアがいる。そうだ、まだやつがいる。そして人間どもが我らに対抗できるのはエルガイアであり、奴と戦い続ければ、エルガイアのような人間の戦士が必ず必要になる」


 まずい。直感で分かる。


 戦士としての絶望、戦士が存在しない世界で目覚めてしまった哀れな太古の戦士。

 戦いを渇望する、狂気の気配。


「拓真君には手を出させない!」

「エルガイアがいなければ、何もできぬ人間どもが! そんな玩具のような鉄の塊で我の体を貫けるものか!」


 一触即発。


 緊張の糸が引き絞られる。

 その時――


「まて!」


 木場と一緒に背後からの声を聞く。

 そこには結崎拓真君と倉橋優子君がいた。


「おお、エルガイア!」


 待ち焦がれた相手に、アスラーダが感嘆の声をもらす。

 拓真君に向かって叱咤する。


「何で戻ってきたんだ!」

「だって……」


 拓真君の声は震えていたが、それを振り払うかのように叫んだ。


「だって情けないじゃないか! 戦わなければならない相手にびびって、腰抜かして、がたがた震えて、後輩の女子に慰められるなんて情けないじゃないか!」


 拓真君が進み出て、俺達の前に立った。


「やってやるよ。戦ってやろうじゃないか!」

「ならば早く変身しろ!」

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