交錯―Complication―
コーポ高松。三階建てのアパート。この204号室に西嶋の部屋がある。
車から降りて建物の階段を上るが、どうも日の入りが悪いらしく、コンクリートの階段は冷えて湿った感じがした。
建物の二階に到着すると、西嶋の部屋がすぐに分かった。
204と書かれたプレートが貼り付けられているドアが開けっ放しになっていた。
早足でドアへ向かう、無意識に自分の胸を手で当てていた。背広の中の、拳銃の入っているホルスターを確認する。
人の気配は……感じられない。
半開きになっているドアを開けて中に入った。案の定、西嶋の姿はなかった。
後ろにいた木場が首を伸ばして中を見ると、
「舘山寺さん、何なんですか? これ……」
部屋の中は騒然としていた。風が吹いてカーテンがめくりあがり、割れた窓ガラスが見えた。それよりも……
畳張りの床一面に大量の紙が広がっていた。
ポケットに入れていた白手を両手にはめて屈む。プリンターから出力したのだろう、画像つきの紙を手に取った。
どうやらどこかの遺跡のようだ。
部屋の中に入るのは……無理そうだ。床一面に古代遺跡らしき画像つきの紙が散らばっている他、窓ガラスの破片がところどころに散らかっている。部屋自体が何かしらの手がかりになる状態になっていた。これは鑑識班を呼ばなければならないだろう。
「うん?」
床に散らばった紙の中……一つだけ奇妙なものがあった。
それも手にとって眺める。
「…………」
それは右腕のミイラの画像だった。
ただし枯れ木のように皺だらけの指先、そして手首から肘にかけて、白いプロテクターのような質感の防具がくっついている。
遺跡の中で発見されたものなのか?
――俺が、俺が持ってきてしまったから……。
ひょっとしてこれの事なのか?
ポケットから計帯電を取り出して操作し、西嶋の電話番号へかける。
ぴりりりり……ぴりりりりりり……
携帯の着信音が部屋の隅から聞こえてきた。
見ると西島の二つ折りの携帯電話が開いた状態で転がっていた。
これでは外に出た西嶋と接触が取れない。
一体何に追われているんだ?
「木場、しばらくこの付近を巡回するぞ。何に追われているかは知らないが、西嶋がまだ近くにいるかもしれない」
「はい」
とりあえずこの部屋は鑑識班を呼んで洗わせよう。
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