0-2
夢を見ていた。
そう、私は今夢を見ているのだと自覚している。
見る夢は様々だ。
私が今生きている世界ではない、他の世界の夢。
例えば……。
どこかの草原に立っている夢。
どこかの森の前で歩いている夢。
木のみになった林檎をかじったり、冷たい川の水に足をつけている夢だったり。
それらはよくバリエーションに富んでいて、作為的には選べない。
内容は至極ありふれたものばかり。
大した事のない、ただの日常の光景ばかり。
けれど私はその夢の中では、別人になっていた。
長い白い髪に、長い灰色のドレス。
傍らには、白い鳥の友人を連れて歩いていて。
時に知らない思い出を語らいながら、時に知らない誰かと話しながら。
その私は、この私の知らない人生を送っている。
それは優しい世界の夢だった。
それはそれはとても暖かい日常の夢だった。
けれど、そんな毎日はある日を境に終わりを告げてしまう。
この私は知っている。
でも夢の中の私は、まだその事を知らない。
ただいつまでも、定められた運命の中で幸せそうに笑っていた。
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