06 役者集合
異界 シュナイデル城
未来の生きていた世界ではない、異界の世界。
降り立ったそこで出会たのは、顔見知りだった。
テレビの中でしか見た事のない白亜の白のてっぺん、最上層だか星を見る為の星見台だが知らんが、そんな高所の場所で出会ったのは、つい先日会ったばかりの人間だ。
聞いてない。
未来「何でお前が先にいるんだ」
三座「あら、来ないかもと思っていましたのに、来たんですのね」
再会したのは本を借りた主、大道寺三座だった。
三座「読み込みが浅いですわよ、それとも例の本には記されていませんでしたの?
私達には私達の目的があって、友を目覚めさせるためにこの世界を訪れる予定があったんですもの。私と貴方は別にそんなに仲良しと言うわけではありませんし、一緒に行かなくともよろしいでしょう」
確かにそうだが、こっちは知り合いに会えなくなるかもしれないと覚悟して来たと言うのに。
金持ち言葉で話す少女はやはり、金持ちと言うイメージ通り高慢ちきなのか。
三座「あら、心外ですわね」
そして、それからも妙な出会いは続いていく。
未来達が異世界に渡ったのとは関係なしに、初染町の集団神隠し事件は起こったようで、学校生徒が異界後のあちこちで目撃され始めたのだ。
???「未来さんの言う通りでしたわね。ああ、安心してください。彼らの保護は出来る限り手を尽くして行います」
事態に応対するのは、この世界に初めて降り立った場所……城の主だ。
未来達は現在客の身分として、その場所を拠点にしている。
それで、今は城の主の茶会に幼なじみと共に招かれた状況。
城主「だから安心してください」
対面から声をかけてきたのは絵に描いたような姫君然とした少女。
金髪に青い瞳をした年端も行かない少女は、そんな見た目でも一地方を収めるやんごとなき位の人間らしい。
ファンタジーか、この世界は。いや、そうだった。
思わずらしくもない突っ込みを心の中でしてしまった。
茉莉「あれー、未来気が付かなかったの。だってこの世界魔法が使えるんだよー」
傍にいた幼なじみが声をかけてくる。
風を起こして誰かに作ってもらったらしい風車をまわしている茉莉から視線をそらした。
そう、この世界では、未来達が使える様な超能力は一部の人間の特技なのではなく、ほとんどの人間が使えるシロモノらしいのだ。そこらを歩いて通りで、十にも満たない年の子供が最初に超能力を使っている場面を目撃した未来の心境をどうか察してほしい。いや、誰に話している?
茉莉「ちょーのーりょくじゃなくて魔法なのにー。あ、そうだ。あのねー未来、今度アイラちゃんが一緒に練習で、燃やしっこしようって言ってたんだ。見に来てよー。炎の魔法は得意じゃないけど、お祭りの景品に猫のヌイグルミがあるんだよー。頑張るから」
馬鹿みたいな台詞に、頭が痛くなってきた。
数週間後にここらで行われる水の恵みに感謝を示す目的の祭りで、茉莉の頭はいっぱいの様だった。茉莉という名前だけに、賑やかしい事に目がない。
茉莉「未来も一緒に周ろうよ。ねー、いいでしょー?」
おかしい、もっと殺伐とした戦いを想像していたのに、こののほほんとした空気は一体何なんだ。
いや、困難自体はある。なんせ世界が違うのだ。ちょっと話の通じない連中が多かったり、気性の荒い生物がいたりもするが、大抵は大して苦労もなく解決してしまうから、殺伐としないだけで。
城主「茉莉さんなりの気遣いなんですよ、未来さんも息抜きされてはどうですか?」
ため息をついたら自分より低い身長の異界の姫君にフォローされて、更に何とも言えなくなった。
だが、すぐに思い知る事になる。
そんな幸せな日々を失うのは一瞬であると。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます