02 少女



 怪我をした猫とやらはすぐに見つかった。

 公園で知り合いの子供達と面倒を見ていたという話だが、いなくなったので探していたというわけらしい。


未来「捨て猫か」

???「そ、首輪ついてなかったし、近くに段ボールがおいてあったからね」


 少女は別に猫好きでも何でもないと言うが、猫の方は少女の事を気に入っているらしく腕の中で機嫌好さそうに鳴いている。


???「えっと、その……」


 何故か少女は周囲をきょろきょろと見まわしてから、改めてこちらに発言した。


???「助かったよ。正直見つからなくて困ってたんだ」

未来「そうか、見つかって良かったな」

???「うん、本当にね」


 ほっとした様子で肯定の言葉を返す少女を見て、手が自然に動いた。

 一回り小さな所にある頭を撫でる。


???「ちょ、何して……」

未来「気にするな」

???「気にする! 凄く、気になる!」


 慌てた様子で恥ずかしがるように挙動不審となった少女の様子が面白くて撫で続ければ、猫の様な威嚇の声を出されて距離を取られた。


???「しゃー!」

ねこ「みゃー!」


 腕の中にある猫と共に。

 まるで兄弟か姉妹だ。


???「こいつひょっとして変態……?」


 お前は頭を撫でる人間をみんな変態にするつもりか。


???「ま、まあいいけど。そういう事だから。感謝は伝えたからね。ちゃんと伝えたから」


 念押ししなくてもちゃんと伝わっていると言うのに。

 少女は顔を赤くして気恥ずかしそうにしながら後ずさっていく。離脱したそうにしていた。


「あ、みー姉ちゃんだ」「みー姉いた!」「猫ちゃんもいる」「さすがみーみー」


 そんな風にしていると同じように猫の世話をしていたらしい者達が寄り集まって来る。集合時間だったらしい。どうやら少女は近所の子供たちのまとめ役の様な物だったらしい。


 駆け寄って来る集団を見つめる少女は、面倒くさそうな表情になる。

 世話が大変そうだ。


???「あぁぁ、うるさいのが来た。からまれると厄介だから早く行きなよ」


 それは確かにその通りだろう。

 あの騒がしさは疲れそうだ。


未来「またな」

???「また会うかどうか分かんないけど。まあ、またね」


 そう言って背中を向けて別れる。


 背後で、


???「アタシはねこじゃないっ! みーみー言わないでってば、ねえ」


 そんな威勢のいい少女の声が聞こえて来て、未来は帰途へと付いていく。

 そう言えば名前を聞くのを忘れたと思いながら。



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