02 ミーティング
揃ったのは全員だった。
今日は平日だ。
集めておいてなんだが、本当に学校をさぼって来るとは。
桐谷先輩に円、有栖に雪高が集まってこちらを見ている。
茉莉「雪くん、おはよー。ふぁ……」
雪高「茉莉姉ちゃん、しっかりしろよな」
船を漕ぎ始めて頭をゆらす茉莉を支えているのは雪高だ。
その隣で有栖が嫉妬するのは、いつもの事。
二人は茉莉が拾って基地メンバーにしたのだ。物体を光らせる能力を持っている事で、いじめられていた有栖を守るために。
さて、混乱したままどうにかしなければと集めてしまったが、これで良かったのだろうか。
未来「聞いてくれ、茉莉が狙われている」
悩みつつも、自分一人で手に負えないのは紛れもない事実だ。
正体の分からない組織に茉莉が狙われているらしいという情報を、できるだけ分かりやすい様に話していく。
山の中洞窟の内部に潜む者達、魔湧きという怪異を防ぐための生贄集め、神隠し。
それらの集団を統率しているらしい人物、茉莉の偽彼氏……氷裏率いる詐欺集団と、怪異を恐れて生贄を集めようとしている連中の事。
ざっと、分かっている範囲の事を説明すると、最初に手を上げたのはやはり桐谷先輩だった。
桐谷「事実だと仮定して、何故その怪しげな連中は茉莉を狙っているのだろう。連中の何かを知ったのだというのなら、その情報が鍵になると思うのだが」
情報、そうだ。
茉莉はわざと彼女のふりをして氷裏に近づき、何かを調べていると、そうアイラが言っていたではないか。
茉莉は一体、何を掴んだんだ。知らなくていい事を知ってしまったから、狙われたんだろう。
有栖を助けた影響で狙われただけ、と言う事も考えるがそれにしては他のメンバーに危害が加わる様子は最後までなかったのだ。最後まで……。
桐谷「ふむ、それは問題だな。そこら辺の事情が分からなければ、行動のとりようがない。考えようにも手が詰まってしまうだろう」
ここにいる茉莉は、その情報を知らないから聞いても意味はない。
けれど、問い詰めれば他に何かあるんじゃないだろうか。
そう思って、雪高に世話されている茉莉に声をかけようとするのだが。
円「その前に」
機会を奪うかの様に発言するのは円だ。
円「その話、冗談ってわけじゃないの? 確かに未来少年がそう言う事いう人間じゃないって事は知ってるけどさ。鵜呑みにするにしてはあまりにもスケールが大き過ぎよ……ねぇ」
お前が言うのか。
お前が、引き受けた依頼だって疑わしい類いのものだったじゃないか。
円「そんなの知らないわよ。未来はあたしがそんな危険そうな事を、アンタ達に頼むとでも思ってるのかしら? あらそう、そこまで信用がなかったとは驚きね。桐谷程じゃないけど、アタシだって基地のメンバーの一人だって自覚はあるのに」
次第に刺々しくなっていく口調に困惑する。
なんだ、何でそんなに急にケンカ腰になるんだ。
円「アタシは不用意に仲間を危険な目になんか会わせたりしないわ。そりゃあ面倒事はいっつも手伝ってもらったりしてるけど、そんな事頼むわけないでしょう」
桐谷「落ち着きたまえ、円」
語気を荒くする円はしかし、同意を求めるように、有栖や雪高に視線を送る。
有栖「そうね……。あたしも、信じらんない。だってそんなの、映画とかアニメとかの出来事でしょ。ありえないわよ」
雪高「俺は、信じたいけど……」
有栖は否定的で、雪高は判断しかねると言う様子だ。
茉莉「あたしは信じるよ、未来が大変なんでしょ? だったら皆で助けてあげようよー」
雪高「いや、茉莉姉ちゃん。大変なのは姉ちゃんの方だって」
茉莉「えー、そうなの? 大変だねー」
雪高「話聞いてた!? 理解してる!?」
茉莉の意見はどうでもいい。
阿保だから。
円「とにかく、アタシはアンタの話なんて信じないから。分かった!?」
円は最後にそう言って基地を出て行ってしまう。
そんなに俺の話が信じられないのかよ。
茉莉「未来ー、円さんは……。怒ってないよ、悲しそうだったよ」
茉莉がそんな事を言ってくるがとてもそうは思えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます