09 1/15 アイラ



 茉莉を助ける事が出来なかった。

 後悔と共に意識が浮上する。

 目を開けると、見知らぬ少女が俺の顔を覗き込んでいた。


 ショートカットの赤髪の、中学生くらいの歳の少女。


???「大丈夫ですか?」


 これが大丈夫そうに見えるか。

 そう言いかけて、傷がない事に気が付いた。

 服は代えられている。

 寝かされているのは白いベッド。いるのは白い部屋だ。


???「怪我は治しました。心配は要りません」


 誰だ。


アイラ「アイラって言えば分かると思います」


 茉莉のネットでの友人か。それがどうしてここに?


 周囲を見回す。

 桐谷先輩はいない。他の人間も。


アイラ「傍にいた人なら大丈夫ですよ。怪我もしてませんでした」


 それなら良かった。

 円達は大丈夫だろうか。有栖を連れ出した事で変な連中に狙われてたりしていないか。


未来「俺は……」


 あの後どうなったんだ。


アイラ「私はとある理由があって茉莉の彼氏さん、氷裏啓介を追っていたんですけど、その際に怪我をした貴方を見つけ、桐谷さんと共にここに運びこんだんです」

未来「氷裏……」


 そいつが茉莉をつれ去った人間の名前か。茉莉を誑かした偽の彼氏。

 やっぱり騙されていたんじゃないか。

 あいつの心を弄ぶなんて。


未来「お前は何者なんだ。あいつらは一体何なんだ」

アイラ「ごめんなさい。追いかけてはいるんですけど、彼らの事はよく分かっていなくて。ただ何か目的が合って悪い事をしている人としか分からないんです。それと私の事を説明すると長くなりますけど」


 構わない。続けろ。


アイラ「分かりました、えっと未来さんは、三年前に初染ういそめ町で起こった神隠し事件についてご存知ですか?」


 知ってる。

 学校ごと生徒百数十人が一瞬で行方不明になった事件だ。

 事件は生存者一名が、およそ十か月後に朽ち果てた学校と共に帰って来ただけで、真相は闇の中になっていたはずなのだが。


アイラ「私が、あの事件の生還者なんです」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る