10 あっけない幕切れ
茉莉の姿を探して、未来は町の中を探し回る。
お前を俺を心配させ過ぎ何だ。少しは反省しろ。
悪態を心の中でつきながらも、心当たりのある場所を周って行く。
話を聞きつけた先輩も同じように探してくれているはずなので、連絡は欠かさない。
もう何ヶ所目になるか分からないその場所を訪れた未来は、見えた人影に足を止めた。
そこは茉莉が良く足を運ぶ公園だった。
目当ての人物は公園の前で立っていた。
遊んででもいたのか。人の気も知らないで。
沸き上がった苛立ちのまま、声をかけようとするが、茉莉の傍に一人の男が立っているのに気が付いた。
そいつは、あの時の男だ。
未来「……っ」
声をかけようと、近づこうと。
だが、そのいずれの行動も起こせなかった。
またあの凶器をふるわれたら。
そう思うと何もできなかったのだ。
茉莉は男に連れられて。近くに止まっていた車に運び込まれて行ってしまう。
抵抗はない。茉莉はどこかぼんやりしたような様子だった。
数時間前に桐谷先輩からもたらされた、催眠術を扱う詐欺師の情報が頭をよぎる。
まさか、わざわざ出向かずとも茉莉自らが罠に飛び込んでくるように仕向けたのか。
いや、そんな事より。
そんな……事より。
動かなくていいのか。
茉莉が、大事な幼なじみが連れ去られてしまうかもしれないんだぞ。
こんな所で、立ち尽くしていていいのか。
けれど、
未来「……」
未来の足は、まるで大樹が地中深くに値を張ってしまったかのように動かない。
車が遠くなっていく。
結局、未来がその場から動けたのは、車が完全に見えなくなってからだった。
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