部室でお昼
※ ※ ※
なんとか部室にやってきて、鍵を閉める。
「ああ……安心してメシも食えない……」
「なーに? あたしにご飯持ってきてくれたのっ?」
部室には来未がいて、コンビニのおにぎり(つなマヨ)を食べていた。
「あっ、来未ちゃん。来てたんだっ」
いつもは放課後に部室に来ていたはずだが(昼は家でレトルトカレーかカップラーメン)、今日はコイツ、この時間から部室に来てたんだな。
「求人誌読んだか?」
「読むだけ時間の無駄」
絶対に働きたくないという意志だけは変わらないようでござる。
「来未ちゃん、サンドイッチ食べる?」
「わーい♪ ありがとう希望おねーちゃん♪」
「こ、こらっ。いきなり妻恋先輩にたかるな! なんなら俺が買ってくるから!」
このメイド服姿で学食内を歩かれたら、えらいことになる。部室棟は裏のフェンスからこっそり入れるから今までオオゴトになっていないが……。
「わーい♪ たまごサンドー! むぐむぐ」
「聞いちゃいねぇ」
「気にしないで、新次くん。ちょっとダイエット中だったし……」
いや、先輩は十分痩せてると思いますけど……胸に栄養いってるっぽいけど。
……まぁ、これは気づかいか。さすが先輩は優しい。兎を飼育するのが似合う先輩ナンバーワンの妻恋先輩だから、こうして来未を餌付けする光景は実に微笑ましい。
って、カレーが冷めちまう。俺も、さっさと食べるか……。
なんだかんだで、四人で昨日の旅行の話をしながら、楽しく昼食をとった。
「……で、放課後に執筆しようと思うんですが、先輩もどうですか?」
メシを食い終わったところで、蔵前から切り出される。偶然だが、俺も同じことを思ってたところだ。家だと集中力出ないし。
「俺もそう思ってたところだ。夜まで書くかな。最終下校時刻までがんばるわ。終わりが見えてくると、やる気が出てくるよな」
「わ、わたしも書こうかな? あとちょっとだしっ」
決まり。これで皆で執筆だ。
「で、お前はどうする? 先に帰っててもいいぞ?」
「あたしもいる! 読みかけのマンガあるし!」
昔の先輩が残していった少女マンガがかなり本棚にあるのだ。ま、家でひとりってのも寂しいだろうしな。
「んじゃ、放課後な。校内うろついて、バレるなよ」
「ここで寝てるし無問題!」
畳でよかったな。……堕落してばかりなのはよくないが、どうも俺もこいつには強く言えない。でも、準保護者なんだから、なにかしら建設的な提案をしないと。
「お前はそこにある『応募ガイド』でも読んで労働に関する標語でも作ってろ」
とりあえず宿題を出しておいて、俺たちは校舎へ戻っていった。
さ、午後の最初の授業は……。
「――それでは、今日は天気もよいので、地元の地名の由来に関するトークをします……」
ああ、よく眠れそうだ……。地理の先生……その話、今年三回目ですから……。
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