第弐戦

「あ"〜……さ"み"ぃ"…………」

晴輝ハルキ声がヤバいよ声が……」

「だってさむ……ブェックシッ」

「クシャミまでもが色気無し……」

「イヤお前は俺に何求めてんだよ?」

何の変哲も無い毎日の繰り返し。季節は巡り、歳は取るけれど。面白さも愉しさの欠片も無い。

「晴輝じゃあ俺コッチだから、じゃーな!」

「おぅまた明日〜」

仲の良い友人と別れ、自宅である武家屋敷へと向かう。

大きく門を構えた晴輝の家、通称『安倍屋敷あべのやしき』は此処ら辺では結構有名だった。

「……たでーまー…………」

玄関に着いてガランとした家内に声を掛けるとすぐに返答があった。

「お帰りなさいませ晴輝サマ」

「毎回言うけど『サマ付け』すんなよ……」

「御屋形様の言い付け故、お許し下さいませ晴輝サマ」

「親父の趣味はおかしいな、何時いつもの如く」

「まァまァ……お荷物お持ち致します」

「ありがと」

家の奥から出てきたのは異常なくらいに真っ白な肌をした着物の麗人だった。

彼は陬皓潾すみしろきよ。此処に住まう男性で、その正体は式神である。晴輝の父、安倍晴駁あべのはるまが彼の主である。

「ンで親父は今日居ンのか? たまには飯食わねぇとぶっ倒れんぜ、あの人……」

「今は就寝中おやすみちゅうで御座います。連戦で御疲れ故……」

「またか……最近増えたな妖祓い…………」

「そろそろアレ▪▪の時期ですからねぇ……血気盛んになる妖も多いのでしょうね」

アレ▪▪?」

陬皓の言葉に首を傾げる。陬皓はニコッと微笑んで説明してくれた。

「あぁ晴輝サマは知らなかったンでしたっけ? 五百年に一度、『地球上最強大会』って言う地球上の王を決める大会が行われるんです」

「王様ァ? ンなもん決めて何かなんのかよ?」

「私にもよく解りません……」

「まァ良いけど」

モグモグと陬皓が出してくれた和菓子(今日はおハギ)を口に含んで咀嚼しながら言う。

陬皓は申し訳無さそうに肩を竦めつつも、俺にお茶を入れてくれる。

「ありがと。……………このおハギ、今日は彼奴アイツが来てんの?」

「えぇ今日は来てらっしゃいます。晴輝サマそろそろ御時間でしょう?」

「彼奴容赦無いんだよなぁ……」

「晴輝サマ思っての事です故」

モグモグゴクンッ

最後の一つを口に入れて咀嚼し飲み込むと立ち上がる。

そして一言。

「今日もクソダルい修行頑張りますか!!」

そうして元気に夕闇に暮れる太陽に堂々と宣言した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒトが恋しくなるお年頃。 幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕 @Kokurei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ