第壱戦

「ン……や、ァ…………」

ジュルルルルルルルルルルルッガタンッ

辺りに血を吸う音が響き渡る。そして満足げな男性の声。

「ふぅ……ご馳走様でした」

ゴトンッ

男性はそう言うと今迄抱えていたモノを▪▪▪床に音を立てて落とした。鈍い音がした。

「あ〜やっぱ美味ぇな欲に塗れた人間の血はヨ」

「…………………………相変わらずおかしな嗜好だな。……闇の中の帝王エンペラー・イン・ザ・ダークネス?」

「お前が言うかよ、悪の花嫁ブライド・オブ・イヴィル

「その名は好かんのだがな……まァ良かろう。…………お主、『地球上最強大会』に出るようじゃな?」

「ン? あぁ人間どもが地球上最強とか赦せねぇからな、だからアレに出て証明すんだよ」

「お主相変わらずじゃのう……」

男性は血に塗れたローブを翻して背後に立つ女性にょしょうを見る。

その女性はとても蠱惑的で魅惑的だった。

金髪ゴールドブロンドヘアーを背後で束ね背中に下ろし、顔は小顔で目鼻立ちが整い、唇はぷっくりと盛り上がった桜色。柔らかな頬は薄紅色に染まり、キラキラと綺麗な光彩を放つ瞳は薄氷色アイスブルーで暖かな感情と冷たい感情が混ざりあっている。服は身体のラインがクッキリ解るイブニングドレスの上に真っ蒼なフード付のドレスローブを羽織っている。

対して血を啜っていた男性は煌びやかな銀髪に血を垂らした様な深紅の瞳、片方だけの片眼鏡、服はまるで吸血鬼伯爵ドラキュラをそのまま真似したような英国紳士イギリスジェントルマンの服装をして、上に真っ黒なマントを羽織り、まさに闇の中の帝王エンペラー・イン・ザ・ダークネスと言う名が似合っている。

「お前は出るのか?」

「…………イヤ吾は遠慮しよう。お主だけでは無いのだろう?」

「ン? あぁ俺の他にアイツも▪▪▪▪出るって……」

「なんじゃアヤツも出るのか、意外じゃのう……地下から出る事を極端に嫌がるようなアヤツが、のぅ……」

「アイツにも何か思う所があったんだろ」

「ふぅん?」

女性は興味深そうに薄氷色瞳アイスブルーアイズをクリッと動かす。

そして感慨深そうに呟いた。

「いつも慎重派のアヤツが、のぅ……珍しい事もあるモンじゃなァ?」

「アイツがアイツらしく無かったな、この前逢った時は。また精神を何処かに飛ばしてんじゃねぇか?」

「フム。無くは無いのぅ…………何千年と過ごしてきたが、アヤツの行動は未だに読めぬからのぅ……」

「ま、俺ァ戦えりゃあソレで良い」

「お主は相変わらず戦闘馬鹿じゃのぅ……」

「うるせェよ。じゃあな」

会話を一方的に打ち切ると男性こと闇の中の帝王エンペラー・イン・ザ・ダークネスは闇を纏いながら月も無い暗闇を歩いて消えていった。

ソレを見届けて女性は呆れたように呟く。








「…………………………少しは考えて行動しろよ狂戦士バーサーカーが……」









そう呟くと女性もまた、闇夜に消えていった……。

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