第5話
『最高危険区域』
無数の銃弾が浴びせられ、雷鳴の様な銃撃が響き硝煙が霧の如く辺りに立ち込めていた。
さらに、不気味な物音が響いてきた。
空気を引き裂くような砲弾音が響き、それは周囲のあちらこちらから裂音を
響ききかせる。
「(ああっ!!、どうしょう、どうしょう、どうしょう、どうしょう!!!)」
彼の頭の中をその言葉が呪文のように駆け巡り、他の思いは全てかき消されて
いた。
全身をミリタリー装備で固め、話しかけてきた人物が頭を吹き飛ばされると
同時に、彼は、別の人物によって地面に引きずり倒された。
凄まじい自動火器類の音で聞き取れはしていないが、彼の付近にいる管理職員は、 必死に無線機で状況を報告している。
「(どうしたらいい?、いったいどうしたらいい?、俺はいったいどんな場所にいるんだ?)」
なんとか大きく息を吸い込もうとしたが、脳味噌が凍りついてしまっていた。
それは無理もない事はたしかだ。
彼は、軍人でも警察官でもない。ただの平凡な一般市民だ。
気が付けば、『異世界』に紛れ込んだだけだ。
土砂のすべり落ちる音と視界の隅に映る辺りの動きが、彼の注意を捉えた。
その先から、蠢く黒影を見てさらに深い戦慄を禁じえなかった。
彼の世界では、ライトノベルやテレビゲームで登場している
魔物の姿が見えた。
彼は、人並みにライトノベルを読み、RPGゲームをプレイしていたので
なんとなくわかった。
小柄で犬に似た頭部を持つ人型生物―――『コボルト』という名の魔物であると。
しかし、それは本当にコボルトで合っているのかはわからなかった。
軍隊や特殊部隊を彷彿とさせる様な隊列を組み―――
自動小銃の引き金を絞り、爆薬物を投げ―――
遮蔽物で身を守りながら襲い掛かってくるのが、 はたしてコボルトなのだろうかと。
彼が知識として知っている『コボルト』とは、まったく違った。
「(俺はどのような場所に来たんだ?)」
彼は、コボルトの群れが自分に向かって来るのが見えたため、
胸いっぱいに息を吸い込んだ。
全身がぞっと総毛立った。
彼のすぐ隣では、ノーム族らしき身体の管理職員がヘッドホンから、
聞こえてくる声に答えていた。
「こちら『デーメト』!! 了解した!!
攻撃指定範囲座標位『××××××』
座標位置付近には、カテゴリーレベル4の『コボルト』が展開中!!
繰り替す!! 座標位置付近には、カテゴリーレベル4の『コボルト』が
展開中!!」
ノーム族らしき身体の管理職員が、必死な声で応答する。
『 『サイレントナイト飛行隊』・・・・・・了解。
これより・・・攻撃支援を開始する・・・以上)』
その様子を彼は怯えた表情で見た。
一体何をしているのだろうかと、彼は思った。
その彼の疑問は、まもなくして解けた。
上空を何かか飛んできた。
彼は、それに気づいて上空を見上げると、5つの飛行物体が、上空を
数回ほど旋回していた。
そのうち、2つが高度を低く下げて飛行する。
2つの飛行物体は、地面ギリギリを飛行し、『コボルト』の集団がいる場所にて、灼熱の炎を撒き散らした。
灼熱の炎が撒き散らされた付近一帯には、『コボルト』が固まってはいたが、
灼熱の炎の中へと消えた。
その光景を目の当りにした彼は、茫然とした。
それは、彼に取って衝撃的な体験となった。
「(――――なんだよ・・・・あれ、ドラゴン!? 何なんだ・・・
ここは)」
彼は、ぼんやりする頭でそう考えた。
付近は焦げ臭い匂いと生肉が焼ける様な臭いが漂っている。
ノーム族らしき身体の管理職員が何かを話しかけてきたが、聞き取れなかった。
「(これから、俺はどうなるんだろうか・・・)」
彼はこれからの事を思うと、不安しか感じられなかった。
異世界に迷い込んだ一般市民 大介丸 @Bernard
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