第3話
『『デーメト』から本部へ。
了解しました。 これより――――)』
人間種族らしい身体をした冒険者管理職員がその先を言えなかった。
なぜなら、特殊魔術高度視覚表示装置の画面にアップで映し出されていた管理職員の頭部が、まるで後方からハンマーで殴られたかのような勢いで
視界から消え去ったからだ。
映像が激しく揺れ、その直後に鋭い銃声が、そしてそれに重なる
ように爆発が起きた。
その音がスピーカーから流れた刹那、映像が乱れ途切れた。
人間種族らしい身体の管理職員の姿が画面から消えた瞬間、その頭部が明らかに吹き飛ばされたと分かる飛沫が上がったのが、この場にいる全ての
管理職員には分かった。
一体何が起きたのなど、この場には説明は不要だった。
「 『デーメト』所属管理職員の生命反応が消失しました」
凍りつき痛いほど静まり返った室内に、ノーム族の女性管理職員の声が淡々と響く。
「 本部より『デーメト』へ、応答されたし!!
繰り返す 、 本部より『デーメト』へ応答されたし――――映像と音声の回復は!?」
南部出身で日焼け肌の人間種族管理職員が誰ともなしに尋ねた。
「まもなく回復します――――、映像回復しました!」
ダークエルフ種族の女性管理職員が特殊魔術高度視覚表示装置を操作しながら返答する。
「音声の回復もまもなく回復――――音声繋がりました!」
ドワーフ族の管理職員が、音声を回復させるための操作を行ないながら応える。
時間にして数十秒後、音声が繋がったスピーカーからは、五十丁近くの
自動小銃が一斉に唸り声を上げて、弾丸を吐き出している轟音が聴こえてきた
『『デーメト』から本部へ!! 隊長が戦闘行動不能!!・・・
繰り返す、隊長が戦闘行動不能!!
我々は・・・ 現在、『魔物カテゴリーレベル4』該当するコボルトの大集団と
交戦中!! 至急、緊急脱出テレポート・ゲートの構築を要請する!!』
スピーカーからは悲痛な声が聴こえてきた。
映像が回復した特殊魔術高度視覚表示装置からは、リアルタイムで交戦映像が
写し出される。
そこには、コボルトと称される魔物が奇声と雄叫びを発している姿が
写し出されていた。
しかし、手に持っているのは従来の様な斧や剣といった武器ではなかった。
紛争地域などで数多く使用されている銃火器類や爆発物を所持し、
動きも、従来の力に溺れ、闇雲に襲撃し、理地を軽んじる狂犬の如く襲いかかって来ない。
戦場の激戦地に投入され、さらに洗練に鍛え上げられた最精鋭の特殊部隊、傭兵団や正規軍の如く、隊列を組み突き進み、木蔭などを銃弾避けにして発砲している。
「 『警戒待機』ティームに緊急出動要請!! 『最高危険区域』内の安全地域にて『テレポート・ゲート』を緊急構築開始!!
『デーメト』ティームのいる場所ではゲートの構築は、地場関係で構築不能だ 急げ!!」
南部出身で日焼け肌の人間種族管理職員が短くそう告げた。
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