第2話
その不審冒険者(?)は、愕然とした表情を浮かべながら、辺り周辺を見渡して
いた。
『デーメト』の冒険者管理職員は、全員一斉に高度特殊魔術を唱えた。
その魔術は、一時的に気配を消せる高度特殊魔術だ。
唱え終えると『デーメト』の冒険者管理職員は、慎重にゆっくりと不審冒険者へと近づいていく。
不審冒険者は、何処か泣きそうな表情を浮かべながらその場に腰を下ろそうとしていた。
「探索ご苦労様です。ヘーリラト連合警備隊冒険者管理局です。
御一人で探索ですか?」
人間種族らしい身体の管理職員が穏やかな口調で話しかけた。
突然話しかけられて、不審冒険者は驚きながら振り返ってきた。
その不審冒険者は、『デーメト』ティームの服装を見て何か戸惑った
反応をした。
人間種族らしい身体の管理職員は、その反応に若干違和感を感じた。
話しかけた人間種族の体格をした管理職員以外は、軍用小銃の安全装置を
外して、周囲を警戒している。
いつ何時、魔物が襲撃してくるかわからないからだ。
「えー・・あー・・・」
明らかに挙動不審な返答をしてくる。
「申し訳ありませんが、規則なので冒険者身分証明書を提示していただけますか?」
人間種族らしい身体の管理職員が穏やかな口調で尋ねた。
黒いボディアーマーを何処か珍しそうに見ている、眼の前の不審冒険者の反応に
やはり違和感を感じた。
冒険者であれ、一般市民であれそれほど珍しそうに見るはずがないからだ。
「あー・・・、すみませんが、ここって何処なんですか?」
不審冒険者が尋ねてきた。
『ヘーメルナ大陸東部自由都市ヘーリラト・連合警備隊冒険者管理局支部管轄:
『最高危険区域』検問施設』
設置されている無線スピーカーから、騒がしい雑音と同時に流れてくる声が原因で、緊迫した雰囲気に包まれていた。
また、一定の場所には特殊魔道で製造されたと思われる平面状の薄型な高度視覚表示装置や高度通信機器が設置されていた。
特殊魔術高度視覚表示装置は、映像(静止画映像を含む)を表示したり、『最高危険区域』内に投入されている各冒険者遺品遺品回収ティームの交戦を記録する目的とした機器だ。
設置されている幾つかの大型の特殊魔術高度視覚表示装置には、投入されている各冒険者遺品遺品回収ティームの交戦映像と各ティームメンバーの
生体反応がリアルタイムで表示されていた。
ただ、特殊な地形と地場のためか、映像は時々乱れたりしている。
また、この場所に詰めている冒険者管理局職員達も人間種族だけではなかった(人間種族には、ヘーメルナ大陸各地域民族出身の管理職員の姿もある)
エルフ、ホビット、ドワーフといった基本的な異種族を筆頭に、
フェアリー、フェルパー、ラウルフ、リザードマン、ムーク、シャドーエルフ、ダークエルフ、それらの各混血種族が、連合警備隊冒険者管理局が支給している制服を纏っている
管理職員達は、凄まじい形相を浮かべながら情報集のためか走り回り、高度視覚表示装置や高度通信機器の操作を行っていた。
特殊魔術高度視覚表示装置の操作をしているノーム族の女性管理職員の
後ろに、ヘーメルナ大陸南部出身で、日焼け肌の人間種族管理職員が
高度通信機器で連絡を取った。
「 本部より『デーメト』へ。繰り返し伝える。
『冒険者身分証明』を当たっているが、『×××・××××』の名の
冒険者は該当しない」
南部出身で日焼け肌の人間種族管理職員が応える。
設置されている特殊魔術高度視覚表示装置の画面には、《《人間種族らしい
身体》》の冒険者管理職員の姿が映し出されていた。
『 『デーメト』から本部へ。
それは、極東地域出身者でも無いということでしょうか? どうぞ』
設置されているスピーカーから、雑音混じりの返信が返ってくる。
「本部より『デーメト』へ。
現在、各大陸の『冒険者管理局極東地域支部』へ問い合わせているが、
まだ返答はない。
『デーメト』へ、発見した不審冒険者を速やかにこちらまで連行しろ。どうぞ」
日焼け肌の人間種族管理職員が落ち着いた口調で告げた。
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