第38話

~a girl talks with a girl~

「……ちょっと部室行ってくるわ」

「待って待って待って!! ここで乱入したら元も子もないよ可奈江!」

「じゃあ私にこれを耐えろと? この惚気に耐えろと?」

「だったら盗聴なんてしなければいいじゃん! スイッチ切れば済むだけのことじゃん!!」

「それじゃあ東君の心がいつ折れるかとか、二人の人間関係がどのように断ち切られていくかとか、そういう重要なことが分からないじゃない」

「そこは重要じゃないよ!? 重要なのは二人のこれからだよ!? 盗聴器なんて買ったのも録音してるのもやっぱり可奈江絶対楽しんでるよねそうだよね!! さっきもあたしを部室から呼び出すっていう口実でマイクテストしてたよねあれ何か妙に可奈江の声弾んでたし!!」

「そういうあなただって、さっきまでアイツの惚気にニヤニヤニヤニヤと……私だって、私だって瑠衣のこと……」

「ん~もうほらほら泣かないでよ可奈江。ね? 再来週京都に行くんでしょ、折角の二人っきりなんだから……」

「……その二人きりにあの空手馬鹿を誘おうとしたのは誰よ。二人で話している時であっても、いつもいつも男の話ばっかりするのは誰よ」

「ひぇあ!? そ、そそそんなにいつも話してるわけじゃないもん!!」

「……ということは幾らか自覚があったということね。そうでしょうねもう分かったわいいわよいくらでもイチャイチャしていればいいわ」

「だーかーらぁあああ~~~!! ……ん、あれ?」

「瑠衣?」

「何か静かになったよ? 東君、もうテストのこと話しちゃったのかな?」

「何ですって? きちんとやれているのかしら、あの子」

「ふふっ、可奈江って面倒見いいよね。いっつも東君のこと気にかけてる」

「……私は基本的に愛に溢れているのよ。同類に関してはね」

「う~ん、まぁ、可奈江よりかは軽症だしね、東君。きっとやり直せるよ」

「えぇ……あの子、上手くやれるわよね……」

「また同じこと言ってる……」

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