第32話

~a girl talks with a girl~

「かーなえっ! おはよう!」

「えぇ、だけれどもその前にその傷の説明を求めるわ。それは一体誰にやられたのかしらいいえ言わなくても分かるわあの空手をやってたとか調子づいている後輩でしょうそうでしょう分かったわ今すぐ滅してくる!」

「大丈夫大丈夫、あたしもお返しに箒で頭をスイカ割りっぽく殴ったし、何よりその後にパパが一殴りで五メートルぐらい吹っ飛ばしてたから」

「……お父さん、やっぱりそちらの方面でお金を稼いだ方が良いのではなくて?」

「うぅ~ん、乗り気じゃないんだよね」

「まぁそれは置いておいて……本当に大丈夫? 実はあの下衆に弱みを握られたとかじゃないの? もしくは洗脳? 神の教えとか言われて殴られたわけじゃないのね?」

「も~心配し過ぎだよ、保護者じゃないんだから」

「ならいいのだけれど……そう、まだ何日か先のことで、少し瑠衣にお願いしたいことがあるの。聞いてくれるかしら?」

「うん?」

 ……。

「……ということで、変な干渉はなるべく避けて欲しいの」

「分かった、けど……大丈夫なの? そんな簡単なことで東君が改心したりするかな?」

「大丈夫よ。あの子は基本的に他者からの愛に飢えているだけだから、ちょっとした友情でも見せればすぐにでもコロッといくに決まっているわ」

「う~ん……そんな子だったっけ、東君」

「えぇ。きっとあの子は落とした消しゴムを拾ってくれた女の子の名前を一生忘れないクチよ。同窓会でもまだその子のことを覚えていて、かといって話すことも出来ずにその子の左手の薬指で全てを悟ってしまう、そんなタイプね」

「さすがにそれは……あるかも」

「でしょう? だったらこの作戦が奴に効かないはずはない、断行決定」

「うわぁ……いいのかなぁ……一番楽しんでるのは絶対に可奈江なんだよなぁ……」

「前々からあの子の父親には悪感情があったから、丁度いい。何あの今時絶滅危惧種な頑固親父は。ここは二次元ではないの三次元なの、現実を見せてやる」

「可奈江、表情が崩れてる崩れてる! はいスマイル~、ニコニコ~、ここは人前だよ~?」

「……失礼、うっかりしていたわ。ではそろそろ教室に戻りましょう、テストが始まるわ」

「あ……忘れてた……」

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