第11話
〈風見奏太〉
見た感じ、誰かにストーキングされているのかは俺には分からない。
誰かに尾行されているかもしれない、いや、今日はいないのかもしれない。
疑心暗鬼とはよくいったものだ。これが先人の経験か。
舞歌さんは俺の半歩前を揚々と鼻歌まじりに歩いている。その活発で大きな挙動により一歩一歩前へ進む度、可愛さを凝縮したような短髪からほのかな甘い香りを振りまく。
あぁ、何度頭の中で映像化した光景か。まさか仮とはいえ、こんな経験が出来るなんて生きていて良かったと心からの感謝を神様に捧ぐ。……あ、俺仏教徒だった。
舞歌さんによれば、もう借金返済の目処は立っているという。
つまりそれは、俺と舞歌さんのウキウキ・キャッキャウフフ・ライフの早期終了を意味するということだ。
だが、それでいい。別に俺は、これからも舞歌さんと仮の交際を続けようなどとは思っていない。これが早く終了することこそ、舞歌さんの幸せに繋がるのだから。
……。
何だろう、この痛みは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます