第13話 神のみぞ知る
(まずい…相性値68%では勝負するには不利すぎるぞ…)
(なんとか縁結びアプリで相性値を競うのはやめさせる方向に持っていかねばなりませんな…。なに、私は道案内の神でもありますから会話の誘導は大の得意ですぞ。ご心配召されるな。)
(よし、
「あー、あー、うん。大国主殿?これは3柱と1人の運命がかかった大事な話し合いでございましょう?それを本人らの意志と関係なくアプリで決めるのはどうかと思いますがな。」
「…うむ、そういう考え方もあるか。葛葉、どう思う?」
「葛葉はいいよ!」
「いいと言っておる。」
(この小娘…ゆるすぎる…)「ゴホン、中立的な観点から意見を申し上げますが、葛葉姫が良くても他の面々が納得いたしますまい。
「私はいいと思う。」
「げえっ!」
大山祇と
(大山祇殿のあの顔…さては事前に神アプリで相性診断を試して高い数値が出るのがわかりきっている顔…!これはぬかりましたな…)
(どうするのだ!この流れはヤバイ!なんとか流れを変えねば…!)
「なにをヒソヒソ話しておる。大山祇殿も良いと言っているのだ。多数決ということで大綿津見殿もアプリの相性診断の相性値でケリをつけることに従ってもらうぞ。」
「ぐむむ…。」
「では、大綿津見殿の娘、小玉姫と大和との相性を診断するぞ。」
大国主が手元の板を操作すると、何もない空中に出雲縁結び相性診断アプリが起動した。そして小玉姫と大和の情報を入力し、結果は…
「…相性値73%じゃ。」
「大綿津見殿!」
「うむ!なにやら高い数値に上がっておるのう!勝てる…勝てるわい!」
塩土老翁と大綿津見は68%から5ポイント上がった数値に喜び、思わずハイタッチした。
「…喜んでいるところ水を差すようで悪いのだが、73%はどちらかというとかなり微妙な数値なのだが…このアプリの『二人の相性は普通みたい!もっと積極的にコミュニケーションしてみて!』というコメントは若干評価を水増ししてるコメントなのだが…。」
「フフフ…大国主よ。わしは娘の成長に無限の可能性を見たぞ!」
「大綿津見殿…おぬしは何を言っているのだ…。」
「フッ…相性たったの73%…ゴミめ。」
「なんだと大山祇!貴様侮辱するか!」
「真の相性診断と言うものを見せてやろう!大国主我が娘の磐長姫と大和の相性診断をしてもらおうか!」
大国主が磐長姫と大和の情報を入力すると、数秒置いて空中に結果が表示された。
「相性値…92%…だと…?」
「フフフ…コメントも『2人の相性はバツグン!もしかして運命の2人かも!?』と出ているぞ…大綿津見、大国主これは勝負あったな?」
「くそっ!大山祇、この結果を知っていて相性診断対決を了承したのだな!?兄弟ながら卑怯な奴め!」
「黙らっしゃい敗北者!73%の敗北者!」
「まあお二柱とも喧嘩はよされよ。まだ葛葉と大和の相性診断の結果が出ていないからのう。」
「大国主、今の私の娘との結果を見ていませんでしたかな?恥をかくだけやもしれませんぞ。プークスクス。」
「まあまあ、さて葛葉と大和のデータを入力して…と。さてどのような結果が出るかのう…。」
大国主が手元の板を操作すると、突然四方からけたたましいファンファーレが鳴り響いた。そして、ファンファーレが終わると、このようにアナウンスされた。
「おめでとうございます!葛葉姫と大和の相性値はなんと2000%です!もう今すぐ結婚するしかありませんね!」
「やったー!大和とクズハ相性2000%だって!」
「いやーなんてことじゃろう。大山祇殿の娘とも高相性だったみたいなのだが、葛葉と大和は更に上をいく圧倒的な高相性だったとはのうー。これは驚きじゃわい。じゃあそういうことでお二柱とも大和は諦めるということでよろしくお頼み申す。では結婚式の用意があるので我はこれで失礼いたす。」
大喜びする葛葉とは対照的に、大国主はどことなく棒読みな雰囲気で捲し立てた。
「大国主貴ッ様ァ!!!!!!!!!!」
「イカサマです!イカサマをしています!というか百分率で表すならちゃんと100%以内に収めなさい!」
「ハハハ…この神アプリは当たると評判ですから…口を謹んでいただきたい。」
「目を見て言ってみろ大国主!」
「うむ、不正があったのならこの神アプリの相性診断の数値で決めるというのはノーカンでよろしいですな。ノーカンにせざるを得ますまい。」
もみ合いになりかけるところで塩土老翁がパン!と手を叩いてそう言った。
(なんとか有耶無耶になる流れになって良かったですな…。)
(うむ…しかし一週間程度で相性が5%上がるならあと2か月もあれば100%を超えるのう。)
(大綿津見殿も百分率を勉強した方が良いですな。)
「あっ、クズハ良いこと思いついちゃった!」
「ほう、葛葉申してみよ。」
「大和も、岩ババアも、わにちゃんも、3人とも殺しちゃってみんなで仲良く根の国で暮らせばいいじゃん!クズハ頭いー!」
────────
話し合いは強制的に打ち切られた。
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