第3話
あるところにうれないまじしゃんがいました。かれはとてもさいのうのあるまじしゃんなのですが、どうしてかおもうようにしごとがもらえないのです。
そんなあるひ、まじしゃんがまちをあるいていると、ひとりのしょうねんがみちばたでなきべそをかいていました。
「どうした、どこかいたいのか」
しょうねんがおちついたところをみはからってまじしゃんはたずねました。するとしょうねんはひとこと、かなしいというのです。かぞくのあいだでいろいろとあり、そのことをおもいだすと、かなしくてないてしまうというのでした。
「……よし、それならわたしがきみにまじっくをひろうしよう。すこしのあいだだけ、わたしのまじっくできみのかなしいできごとをわすれさせてみせよう」
まじしゃんはごじつしょうねんとふたたびあうことをやくそくして、さっそくまじっくのじゅんびをしようといきおいこんでいえへとかえっていきました。
さて、いえへとかえってきたまじしゃんですが、かれはポストにてがみがとうかんされているのをみつけました。そのてがみはとてもこうきでゆうがなほうそうでつつまれており、まじしゃんはきになってすぐにふうをきりました。
『○○さまへ △○□ほてるかいさい、でぃなーしょーにおけるこうえんのいらい』
△○□ほてるとは、このあたりではもっともおおきく、そしてゆうめいなほてるでした。もしここでのこうえんをせいこうさせたならば、かれのまじしゃんとしてのみらいはやくそくされたもどうぜんです。
まじしゃんはとてもよろこびました。
しかし、てがみをよみすすめてかれはあることにきづきました。なんと、でぃなーしょーのかいさいにちじが、あのしょうねんとまじっくをひろうするとやくそくをしたひにちとかさなっていたのです。
まじしゃんはおどろきとともにそれをうけとめ、そしてしんけんにかんがえました。しょうねんとのやくそくをまもるのか、それとも、でぃなーしょーのこうえんいらいをうけるのか。かれのあたまのなかに、まじしゃんとしてはなばなしくせいこうしたかれのえがおと、まじっくをたのしんですこしだけげんきをとりもどせたしょうねんのえがおとがりょうほううかびました。
……。そして、まじしゃんはなやみぬいたすえに、こうえんいらいをことわってしょうねんのもとへとまじっくをひろうしにいくことをけついしたのです。
まじしゃんはこうかいしませんでした。なぜなら、かれはまじっくをみてえがおになれたしょうねんをみることで、ほんとうのまじっくとはなにかをしることができたからです。なにかになやんだり、おちこんだりしたひとたちをなぐさめてげんきにさせる。それがまじしゃんとしてのやくめでありせきむなのだと、あるひとりのうれないまじしゃんはさとったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます