久方ぶりのバンド練習

 彼らをほだした後にとる行動は決まっていた。


 まず旧校舎の二階に上がり、ドクに「あとでまた来るエロ本はまた今度な」と一言詫びを入れ、やけに怪しむ翔を引き連れ教室を出た。一階へ降り、東の一番奥にある電源装置庫に改造された教室の前へとたどり着く。


「俺たちの練習場所っていやここだよな。懐かしー」


 翔がこめかみをかきながら苦笑いを浮かべる。


 ドクの実験室とは対極に位置するこの場所は、一年前の粕谷明事件以降、俺のもうひとつの自室となり、ひとりでギターを練習する場所となっていた。教室の三分の一を占める産業用電源装置。机と椅子や、ドクが実験で失敗した無数の怪しい家電製品類を防音の意味をこめて部屋の両サイドに積み上げ、埃まみれになっていた床を水拭きして、三日がかりで練習場所として確保したのを今でも覚えている。


 この中には、翔の使いこまれた赤いギターと、ドクに改造してもらったオーバーテクノロジー気味のミニアンプが置いてある。


「なにかと思えば……てゆーか君、シュレって必要?」


「う、ウルセーッ! たまにはこいつに運動させねえとぶくぶく太る一方だろーが」


 翔にいま指摘されてしまったが俺は今シュレを抱いている。これといって特に意味はないのだが、このもふもふが気持ちいいから連れてきた。それはさて置き、ガラス四面張りになった木の扉を引きずって開ける。


「よっ、ブラックヘッド。待ってたぜ」


 最初にポッキーがそう言って出迎えると、他の連中も各々の挨拶で迎える。彼らを先に案内したのはもちろん俺だ。教室の中には各々の楽器と、軽音部から最小限の物だけをと調達させたアンプやドラムセットが配備されており、いつでも楽器を鳴らせるように準備されていた。


 翔に教室の外に引っ張られ、


「どういうことか説明してよ」


「まーまー、ンな怖ぇ顔しなさんなって、とりあえず話は入ってからにしよーぜ」


 と、ついでに素性を明かしたことを説明し、嫌がる翔を強引に部屋へ引き入れる。扇風機のそばにシュレを置き、汗ばんだ手でスタンドに立て掛けられていたワインレッドのグレコを掴み取る。


 ダブルカッタウェイ加工のソリッドボディ。その上に貼られた独創的なワインレッドメイプルフレイムに無数のピッキング痕が刻まれ、所々ひびの入ったベージュのセルバインディングがボディを縁取り、全体を際立てている。音域バランスが良く、切れ味のいいシャープなサウンドを提供してくれるピックアップはゴールド。ウッドフィニッシュ仕上げのネックは濃い木目調で指板のすべりが良く、ヘッド部分だけが明色にあしらえてある俺のお気に入りの一本だ。


 翔に差し出し、


「な、なに?」


「今からみんなとサマフェスの練習するンだ。おら持てよ」


「なんでいきなりそうなるの? ヤダ、僕は弾かないよ」


 予想通りの反応だった。しかし、仲間の協力を得るために費やした労力を無下に扱われたとあっては、俺も黙ってはいられない。


「オメーさぁ、これからもずっとそうやって石になってるつもりかヨ?」


「そ、そういう訳じゃないけど……今はまだ」


「まだって今それを乗越えねーとこの先絶対後悔するって言ったろ!」


 冷静に諭すつもりだったが、優柔不断な翔を目の当たりにしたことで、感情の高ぶりに拍車が掛かる。


 この世界にいる時間に限りがなければどんなにいいことか。それこそのらりくらりしながらゆっくり時間をかけて翔を諭すことができるし、俺だってそうしたい。なによりも翔がそれを望んでいる。しかし、俺がこの世界にいる時間は有限だ。翔に託せることには限りがある。


 ――クッ、こいつだってそれを分かってるはずなのに。


 翔は考えるように俯いたあと、弾かれるように面を上げてふて腐れたようにこう訴えてきた。


「それは君の未来の話だよね……だったら僕の未来はそうならないかもしれないんじゃないの!」


 痛いところを突かれる。


「いーや違うね。オメーの未来は絶対そうなるし、そうなった後で必ず悔やむ。まるで秒針のぶっ壊れたボロ時計のようにおんなじ所を行ったり来たりするンだよ!」


 翔のまさかの反抗に戸惑いを覚えるが、確固たる主張でそれを跳ねのける。


 意地のぶつかり合いだった。


「姉御にブラックヘッド、ちょっと落ち着けよ」


 ポッキーが気を利かせて仲裁に入ってきた。助かった。危うく引き際を失ってしまうところだった。とにかくこれで冷静になって話すことが出来る。気持ちを落ち着かせ、


「オメーが言う通り、そうならない可能性はたしかにあるが、現状はそうなる可能性の方が十分に高ぇ。オメーにはゼッテー後悔させたくねぇ、オメーの事を一番解ってる俺が言ってンだ、だから今は俺のことを信じてくれ」


「そ、そうはいったって、すぐにどうこうできる問題でも……」


「それはわかってる。とにかく、まず試しに触れてみろよ、な」


 そう言って改めてギター渡した。


 最初のうちは渋々だったが、それが一旦手に収まると、まるではじめて手にする宝物のように目を輝かせ、弦を一本一本指で丁寧に弾きはじめた。


 そのタイミングを見計らった彼らが各々の楽器を鳴らしはじめ、スローなギグを開始させた。教室に響き渡るベースの芯のある低音とサスティーン。ハイハット、スネア、バスドラから叩き出されるドラムのリズムが窓ガラスを振動させる。


 彼らが弾きだす懐かしい音色が翔の心を解きほぐしていく。翔はやがてそれに応えるように、黒のストラップを首にくぐらせてギターにシールドを繋いだ。アンプのそばに寄り、電源を入れ、周りの音に合わせながらゲインとイコライザーを調整しつつボリュームを上げる。そしてポッキーから基本の音をもらい、弦を軽く押さえてハーモニクスを響かせながらチューニングを開始した。


 翔の一連の動作を見ていた彼らの演奏に熱が帯びはじめる。エイトビートを刻むリズムの強度が増していき、ベースから弾かれる低音がダイナミックに腹の底へと響いてくる。続いて栗ボーがスタンドからマイクを抜き取りAの発声をはじめる。それぞれの楽器で煽りながら翔が乗ってくるのを今か今かと待ち構えている。そして音の力場が頂点を極めだしたころ、翔が高音を尖らせたファンクなカッティングをライドさせた。


 アンプから聞こえる音色は攻撃的で、全音ブラッシング気味に単音を弾き鳴らすテクニックは観る者を惑わせ、聴き手の心に深々と突き刺さる。

 扇風機があるとはいえ、バカでかい電源装置のおかげで室内は蒸し風呂状態であったが、彼らの額から流れ落ちる汗は爽快の汗に違いなく、その証拠とも言えるべきものが顔中に満ち溢れていた。翔なんて鏡でも持ってきてやりたいくらいだ。久方ぶりのバンド練習。喜ばない理由なんてあるはずがなかった。


「なぁ翔、久しぶりにアレやらないか」


 アレといえばもうアレしかなかった。俺が元となる詞と曲を作り、みんなで編曲して完成させたバンドのオリジナルソング。他にもオリジナル曲は沢山あるが、この曲だけは別格だった。なにせ一番最初にみんなで作りあげた楽曲だからだ。


 何度も書き換えられた歌詞。パートそれぞれの曲調やボーカルのメロディラインやギターソロ。たまにケンカもしながら、それでも「曲を作る」という目標に向かってみんなで完成させたこの曲は、今でも俺たちにとっては掛け替えのない楽曲だ。


 まず、冒頭のリフをギターとベース、そしてドラムでかき鳴らす。そこからギターソロに変わって、ボーカルが挿入される。


 バンドがひとつにまとまって楽曲を作り、演奏するという尊さが身にしみて分かる。寄せ集めのメンバーではけして生まれることのない夢を共有している仲間同士の絆は、音に、曲に、詞に、無限の厚みをもたらしてくれる。そしてその感情は俺たちをいつもこんな気持ちにさせてくれた。


 誰がなんと言おうと、俺たちが日本一最高のバンドだ。


 特にこの時期の俺たちはなんでもできた。世の中どうにでもなったし、四人集まれば恐いものなど何もなかった。


 無敵だった。


 そして演奏が終わった。


「やれんじゃねーか翔!」


「リーダーすごいすごい! ちょっと見ない間にこんないい音だせるようになるなんて。テク磨いたの?」


 ポッキーとたまごっちに褒められた翔は少し照れながら、


「そ、そうじゃないけど、なんか距離を置いたことで逆に縮まったみたいな、そんな感じかな」


 嬉しそうに笑う翔の周りにみんなが集まってワイワイ騒いでいると、栗ボーがその輪に食い込んできてワザとらしく咳き込み、


「フ、別の弾き手を募集するところだったが、貴様が帰ってくるならギターの席は空けておいてやる」


「お前、うちのギターは翔しかいないとか言ってたじゃないか」


「そうなの、栗ボー?」


 翔が栗ボーを見つめると、彼は照れくさそうにうしろを向いて鼻をこすった。


 あの頃の自分を思い出す。


 ケンカばかりしてたけれど、俺たちはいつも一緒だった。なのに俺はその友情に甘え、彼らの言うことを拒み続けた。


 そんなんじゃ足りない。俺の心はもっと複雑なんだ、と。


 なんてバカな事をしてしまったのだろう。


 無性に元の世界が恋しくなり、なんだか泣けてきた。


「俺が悪かった、未来に帰ったらちゃんと謝るから、俺を許してくれよ、早く帰りてーよう、わあああああん」


「なぁ翔、なんで姉御が泣くんだ?」


「さ、さあ、多分、ホームシックにでもかかったんじゃないのかな」


「うるへー。勝手なこと言ってんな、うあああああああん」


 そこで涙を拭う手の隙間から、教室の扉が静かに開いてくのが見えた。


 見つからないようにしてるつもりだろうがバレバレだった。ガラス戸をゆっくりと開き、半分くらいのところでピタリと止め、恐る恐る顔を覗かせる。

 皆がそれに気づいた。

 彼女は、まさか見つかるとは思わなかったと言わんばかりの驚きようで扉にしがみつき、


「あのぉ……」


 白地に葉の模様があしらわれたワンピースと、波打つ白い麦わら帽子。素足に履いた、大きなノースボールの花飾りがあしらわれたビーチサンダルが、夏らしさを演出する重要なアクセントになると共に、彼女の可憐さを際立たせていた。


 私服姿の玉響萌である。


 涙面を拭い取り、


「オメー、俺たちがここにいるってよくわかったな」


 萌は、俺の問いかけに顔を真っ赤にさせながら、


「しょ、翔子ちゃんを追ってたら、みんながここに集まって演奏をはじめたから……」


 ポッキーがさっそく胸ポケットから折りたたみ式の手鏡を取り出し髪形を整え始める。女を前にするといつもこれだ。そういえば、なぜ俺のときはしなかったのだろう。


「追ってって、いつから?」


「い、家を出るところから……かな」


「はあッ?」


 たしかに家の方角は同じだが、俺の自宅から約1キロは離れている。彼女の思わぬ行動に血の気が引いたのは多分翔も同じだ。


 萌は爪先立ちになり、おっかなびっくりげにシールドケーブルの間に足場を求めながら一歩一歩慎重に歩いていき、翔の前に立った。


「翔くん、サマフェス、出るの?」


「ど、どうなのかな……ちょっと弾いただけだから」


 翔が萌の質問をはぐらかす。


 萌は頭はいいのだが、人の話を額面どおりに受け取らない性格だ。翔がサマフェスに出るのは、彼女の頭の中ですでに決定事項とされてるはずだ。

 そこでひとつ気がかりになっていたことを思い出す。


 萌が俺に惚れている、ということ。


 非常に厄介なことではあるが、翔に向けられたこの表情を見る限りまだ救いがある、と俺はにらみ、


「そーだ萌、翔はサマフェスに出る。みんなの前でギター弾いてヒーローになるんだ」


「お、大げさに言わないでよ、まだ決まってないんだから! うっ」


 バンドメンバーたちの追い討ちをかけるような鋭い視線に、翔がたじろぐ。ここで一気にたたみ掛けるべく、


「よーオメーラ。せっかく観客が来たンだ、もう一度カッケーとこ見せてやれよ」


 翔を除いて、俄然乗り気といったように彼らは持ち場についた。萌は渋々移動する翔の姿を見て、まるで芸能人でも目撃したかのように手で口を押さえて感動を顕わにした。


 ――よし、これで翔は過去を乗越えられる!


 やがて各々が、チューニングをしながら演奏する曲を決めてスタンバイに入った。タマゴッチがドラムスティックを叩き、


「わんつーすりーふぉー」


 激しくがなり立てられたシンバルと共にそれぞれの楽器からビートが弾かれる。

 この曲も久しぶりだ。初恋の彼女に告白するといったベタな男視点のラブソング。今の俺にとってはちょっと古臭い気もするが、切ないメロディにアップテンポな曲調が、最後にはフラれるという詩の悲しさを感じさせない曲だ。


 最初が肝心だからトチらないようにと、指の皮がすり切れるまで何度も何度も練習したのを覚えている。地鳴りのようなバッキングからはじまるイントロは、誰が聴いても曲調をつかめるものにアレンジを加えた。そしてここでメロディックなギターソロ……


 おかしい。とっくにAメロに入ってもおかしくないのに、ギターの音だけが乗らない状態でイントロだけが繰り返されている。


 翔の異変にようやく気づいた彼らが伴奏を止めた。電源装置を冷却させる作動音だけが耳に響いてくる。

 隣で観ていた玉響に続いて翔の方を見ると、視線を落とし、まるで信じられない物でもみるような目で、両手を見ながら震えていた。


「ど、どうした、翔……」


 答えはすぐに返ってこなかった。

 萌は何が起きたのかも分からず、心配そうに翔を見ていた。俺と同様に事態を察した他の連中は、気の利いた言葉を選びだすことに窮している状態だ。


 そして翔が、言ってほしくないことを、口にする。


「やっぱり、無理なんだ」


 確率的にしか捉えることのできない量子のふるまい。粒子の運動量と位置を観測するために、とっておきの光子仲間たちを衝突させたのに。このメンバーによる観測でさえ、翔の居場所しか特定させることしかできないなんて、まるで……


「ンなことねえって、久しぶりの観客でちょっと緊張しただけじゃ、」


「それなら翔子だって観客じゃないか!」


 ミクロの領域において、粒子の運動量を正確に測ろうとすると位置が分からなくなり、位置を正確に測ろうとすると運動量が分からなくなるという、量子力学における基本原理のひとつ。この先どんなに技術が発達しようとも、この事実だけは今のところ変わらない。ハイゼンベルクの数式は後に修正され、例外もあるということがわかってくるが、それはごく一部に過ぎず、量子の不確定性は変わらない。


 ――この機会を逃してしまえば翔は……


「これでわかったよね。僕にはまだ……無理ってことなんだよ」


 翔が自虐的な薄ら笑いを浮かべながらそう言った。


 ここにいる誰もがなだめる言葉を見失い、困り果てた彼らが俺に助けを求めるような視線を向けてくるが、どうしていいのか分からない。翔はギターを下ろしてスタンドに掛け、教室を出ようとした。


 引き止めるに見合う言葉が思いつかない。気がつくと背中から襲い掛かるかのように翔の腕を掴んでいた。


「ちょ、まてよ翔、どこ行こうってンだ」


「痛いよ。離して」


 俺の手が翔の腕から力なくずり落ちる。脳が必死に離すなと命令しても体が反応しない。


「翔子、先生には悪いけど、僕先に帰ってるから」


 セミの声が鳴り響く。

 どうしていいのか分からず、互いに何かを言おうとするが言いあぐね、何も話さない時間が無駄に流れていく。


 当時に抱えていた心の闇が予想以上に深かったことを今更になって気づく。ここにいるみんなに罪はない。己の傷の深さを見誤った俺のせいだ。


 その場いても立ってもいられなくなった萌が、シールドに足を引っ掛け転びそうになりながら翔を追って教室を出た。栗ボーも同じように追おうとするが、ポッキーに止められ肩を落とす。


 俺は、翔が出ていった教室の入口の先をずっと眺めている。


 ●


 旧校舎を出ると、外は相変わらずのかんかん照りで、湿度を過分に含ませた空気が、僕に息苦しさをもたらした。


 程なくして追いかけてきた玉響に相当心配されたけれど、そっけなく「大丈夫だから」と言って、旧校舎の入口に彼女を残して逃げるようにたち去った。


 校門を右に出て、脇を通る浅い小川の流れに沿って、水面に揺れる自分の姿を見つめながら何も考えずに歩いていると、苔むした川べりに引っ掛かった手作りの笹船に目が留まり、足を止める。


「はぁ、みんな怒ってるだろうな……」


 後悔するとわかっていたのに、なぜあそこで踏みとどまらなかったのだろう。翔子がせっかく気を利かせて仲立ちしてくれたのに、もう合わせる顔がない。


 ――翔子。


 未来に帰ろうとしている大変なこの時期に僕はなんて愚かなことをしてしまったんだろう。


「未来に、帰る……」


 そうだ、すぐにではないにしても彼女は未来に帰らないといけない。このまま同じ所を行ったり来たりしてるとそのうち「心配だから帰らない」とか言いだすのかな。僕は、それでも構わないけど……


「な、なに考えてるんだ。そんなの、無理に決まってるじゃないか」


 先生が言うように、翔子はこの世界の人間ではない。それに彼女がこの世界に居続けると、なんとかトロトロピーが破綻してとんでもない事が起こってしまう。そんな得体の知れないものにみんなを巻き込むのは絶対にいけないことで、彼女をこの世界に留まらせることは何があってもダメなことで、ダメなことなんだけど……


「なんか、ちょっと寂しいな」


 未来の僕のクセに、寝相は悪くていびきかくし、つっけんどんな態度でいつも僕に接してくるし、口は悪いし、それに男か女かもよくわかんないし。どちらかと言われればきらいな方だし、僕の女性の好みとしては全然埒外だ。けど、


「なんでこんなに胸が痛むんだろう」


 まだ四日と経っていないけれど、日を重ねるたびにそれが大きくなっているのを感じる。彼女のことを考えるだけで、口内に甘酸っぱい唾液がこみ上げてきて、下腹部の方がじいんと切なくなってくる。僕の中で彼女の存在がマイナス面を帳消しにするほどにまで大きく膨らみ、抑えようとすればするほど胸が高鳴る。


 玉響を想う以上に、彼女を想う気持ちが募りはじめている。


「まさかこれって、僕は、ボクに……」


 たとえようのない気持に、どうしようもなく胸が疼いた。

 汗ばんだシャツの上から心臓を押さえ、


「よくわかんないけど、なんか、いやだ。もう、翔子がいなくなるなんて考えれないよ……そんなの、ぜったいにイヤだよ」

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